The children's story for the grown-up 03 それから、暫く二人は会うことはありません。 ブルーは売春を強要されることも無く(キースの閨の相手はさせられてますが)、 学業に専念します。 ブルーさま、専攻は何だろう……建築? (理系好きv) 一方ハレさんも、本業が忙しくなります。 対立組織との鞘当が激化。 抗争だけは避けようと奔走するハレさん。 と、なぜかキースもハレさんに同調します。 ハレさんは単純に人命が失われるのを厭うのですが、キースは機会を 待っていただけだったと。 一気に相手を瓦解させ、同時に自らが全ての主導権を握る機会を。 それは意外に早く巡ってきます(時間無いから〜)。 キースの策略に乗せられて、相手はハレさんの組織の本丸(はい?時代劇??)に、 物量戦を仕掛けてきます。 キースにとって排除すべき者たちが集められた屋敷に、ハリネズミのように 武装した対抗マフィアが攻め込んできて。 応戦一方なところに警官隊までやってきてしまい、ハレさんピンチ。 飛び交う銃弾の雨の中、次々と仲間たちが倒れていく。 絶望的な状況の中、ひょっこりブルーが現れます(お約束っしょ〜v) その理由は適当なのを考えていただいて(笑)、ハレさんはブルーの手を掴んで 一室に飛び込みます。 「…痛いよ…」 弾の音しか聞こえなかったハーレイの耳に届いた小さな声。 気がつけば、指が食い込むほど細い手首を掴んでいた。 すまない…! ハーレイは慌てて手を放す。 至近距離の所々煤けたブルーの顔に、過日のおびえきった表情が重なった。 ぱっと身体を離し、距離をとる。 瞬間―――。 チューン…っ。 二人の間を、壁を突き破った銃弾が走り抜けた。 「凄い…タイミング…」 どこか緊張感の欠けた声を上げたブルーにハーレイは驚き、そして笑った。 笑みを向けられて、ブルーも微笑む。 そんなブルーの身体のすぐ傍を、再び弾が飛んでいった。 「こっちへ…!」 ブルーは身を屈めたまま、走り出す。 跳弾を避け胸に飛び込むと、抱き留められた。 びくっと震えたものの、逃れる様子の無いブルーをハーレイは抱き寄せる。 「離れるなよ…」 ぎゅっと腕に抱かれて、ブルーは心拍数が上がるのを感じた。 鼻をくすぐる、汗と硝煙の匂い。 自分を酷くする時、必ずキースの身体から漂って来る匂いなのに。 今はそれが興奮を生んでいた。 どうして―――?! ブルーは胸、跳ねる心臓の上を握る 思いも由らない自分の変化に、酷く囚われてしまう。 どうして、どうして…? そんな言葉がぐるぐると頭を巡った。 周りの変化にも気がつかないほどに、ブルーは囚われていた。 「走れるか…?」 ハーレイの言葉にも応えは無い。 銃声が止んだのにも気づかず、しゃがみこんだままのブルーの腕を取った。 「あ…」 「どうした、しっかりしろ!」 軽く頬を叩かれ、我に返る。 深い鳶色の瞳に覗き込まれ、ブルーは頬が熱くなるのを感じた。 だが、ハーレイはそれに気がつかない。 電気の落とされた屋敷は、外からの光以外は闇に支配されている。 ブルーは安堵するのと同時に、ほんの少しだけ落胆を味わった。 「走るぞ!」 言葉と共に、ぐいと引かれる。 ハーレイは手を放さないまま、駆け出した。 光の方へ。 屋敷からの脱出では、ハレさん"サイレント・ウルフ"(恥ずかし〜!)の 異名に恥じない働きでブルーを守ります。 音も無く敵に近寄り、ちぎっては投げ?でしょうか。 ブルーは無事キースの元に戻され、ハレさんも大きな怪我も無く 済むのですが…。 目論見どおり、ハレさんの属する組織はキース色が強まります。 仲間を失い、組織として小さくなった分、敵に対する温度が上がりまくり。 敵討ちを、相手の死を望む声に一貫して反対するハレさん。 熱くなる組織とは裏腹に、どんどん立場を無くしていきます。 そうしてとうとう、キースの望む決定的な機会が。 敵のハレさんの組織に対する暗殺計画を知ったキースは、これを逆手に 取る方法を考えます。 肉を切らせて骨を断つ。 身内を殺させ、それを大々的にして相手を潰す大義名分を得るのだ、と。 まあ、こんな感じ(なんて大雑把な計画。マフィアはわかんない だも〜ん←何を今更…)で、ハレさんは人身御供に出されてしまいます。 組織のためになるなら、とハレさんもそれを受け入れて…。 それを知ったブルーは―――。 キイ…。 扉の音。 だが、キースは顔を上げなかった。 ペンを走らせながら、侵入者に声を掛ける。 「…今夜は呼んでいない筈だが、抱かれたいのか…?」 「―――そうしたら、僕の願いを聞いてくれるのなら…」 ブルーはキースの足の間に入り込み、自らベルトに手をかけた。 その手を押し止め、問う。 願いとは何だ、と。 「ハーレイを殺させないで…」 「………何故だ」 ブルーは答えない。 「理由を言わないのなら、聞く気は無い。下がれ」 キースはブルーを足蹴にし、再び手を動かし出した。 紙の上をペンが走る音だけが響く。 静寂。 それを破ったのは、ブルーだった。 「彼を愛している―――と言ったら……?」 「何だ、もう抱かれたのか」 キースは手を止めない。 流石だな、ブルー。尻が軽い。 「―――寝てないよ」 キスもしてない。 ただ、手を繋いだだけ。 それだけだ。 キースは顔を上げない。 「何か貰ったのか」 「……犬用のブラシを一本」 「他には?」 ブルーは首を横に振った。 「じゃあ、何か約束でもしたか…」 「何も…何もしてない。僕は自分の意思でここに来たんだ」 「…………………」 ペンの音は止まらない。 キースも答えない。 でも、ブルーは言葉を続けた。 「彼を救いたい。それだけなんだ」 「…………………」 「見返りなんて無いよ。本当だ」 「…………………」 「彼が助かっても、僕は彼の許には行かない。ずっとここに居る」 「…………………」 「あなたの傍にいるから―――だから、お願いだ…キース…!」 がたん。 キースは立ち上がった。 つかつかとブルーに歩み寄ると、乱暴に胸倉を掴む。 ぐい、と持ち上げると、ブルーの足は絨毯から離れた。 苦しげに歪んだ顔でなお、ブルーは言う。 「お願いだ、彼を助けて…!」 「…………………ふん」 キースはブルーを絨毯に投げ捨てた。 黒檀の机の上から書き上げた手紙をとり、扉に向かう。 「プリーズ…か、いい響きだが―――」 それはベッドの中で聞きたいものだな。 そう言い捨て、キースは扉の向こうに消えた。 「キース…っ!」 ブルーの叫びは、扉にあたり部屋に撥ね返ったのだった。 |