The children's story for the grown-up
01










出会いは、キースの執務室(マフィアなのに執務かい…!:笑)。
呼び出されたハーレイは、でっかい机の前で立たされたまま、
黒革張りの椅子に座ったキースの話を聞いている。
そこにブルーが登場。






キイ…。
扉が開く音に振り返った。
ハーレイの瞳がほんの少しだけ見開かれる。

銀の髪と抜けるような白い肌。
白いVネックのセーターに薄いブルーのシャツ、シャツよりやや濃い目の
ブルーのスラックス。

彼は白、透明といった印象を与える外見の中で、瞳だけが深い色をしていた。
暮れ方色の、深い深い紫。

なんと……美しい…。
ハーレイは嘆息した。

「…キース、呼んだか?」
「ああ」

こっちに来い、ブルー。
ブルーと呼ばれた彼は、ハーレイを認めたのに、そこには何も無いかのように
綺麗に無視した。
真っ直ぐに向かい、抱き寄せられるままキースの膝の間に立つ。
座った男が伸ばした手で銀糸を嬲るのにも反応せず、されるに任せていた。
完全な無表情。
それがかえって彼の美貌を増す。
キースが銀糸を絡めた指を、ぐいと引いた。
ブルーが痛みに顔を歪ませる。
跪いたのか、細い少年のような肢体が机の向こうに消えた。

「―――そう言う訳でお前の所のカルロを2,3日借りる」
「…分かった」

急に話に戻ったキースに短く返答したハーレイの耳に、聞こえてきたのは、
ベルトを外す音と―――。

ん…ふ……ん…。
鼻から抜けるくぐもった声と、微かな水音。

眼を細め眉間に皺を寄せるハーレイに、キースは口角だけで笑って見せると、
話を続ける。
話を済ませるまでの10分ほどの間、机の下から聞こえる音は途切る事がなかった。

「―――以上だ」
「ああ、了解した」

下がっていいと、キースは手を振る。
ドアノブに手をかけ、退室しようとしたハーレイの視界の隅で銀糸が揺れた。
肩越しに振り返ると、うつ伏せで机に押しつけられたブルーの姿が飛び込んでくる。
脱げ、と命ぜられて腰の辺りで手を動かしていた。

「まだ何か用があるのか?」

ブルーのスラックスを床に落としながら、キースが問う。
「いや」とだけ言いハーレイは小さく頭を横に振り、出て行った。

キースは白い双丘を開き、指を差し込む。
人差し指と中指の2本で適当に解すと、猛った自身から先走りと唾液を掬い取った。
入り口に塗り込める。

「ぅ…ふ…ん……」
「いずれあいつの相手もして貰うだろう。よく顔を覚えておけ」
「……………」
「―――力を抜け」

ブルーの口から、押し殺した声が零れた。





キースが物凄い美人を囲っている。
その噂はハーレイも耳にしていた。
供された者たちが「顔もいいが、身体はもっといい」だの「もう一度抱いてみたい」
だの「金を積んでもいい」等と話しているのを直接聞いたこともある。
だが、女だと思っていた。

あんな年端も行かないような子供に…。
しかも同性…少年なのに…。

机に乱暴に打ち付けられた痛みに歪んだ顔の中で、何かを諦めたような、
とても静かな瞳をしていた。
ハーレイの胸に怒りが込み上げる。
だが、何も出来ない事も分かっていた。
キースと自分の立場の違い―――それは如何ともし難い。

廊下を進むハーレイは頭を一つ振り、足を速めた。
彼を忘れる為。
吸い込まれそうな瞳から逃れる為に。










この後も二人は何度も顔を合わせます。
マフィアのアジト(何て言うんだか知らない)でも、キースの館でも。
しかし、お互い口を利こうとしないので、言葉を交わすことも無い。

でもある日街でブルーを見かけたハーレイはあるものを目撃して―――










日曜の朝、まだ店も空いていない時間。
通りを歩くものは意外に多かった。
土曜日の夜更かしという楽しみを捨てて、早朝の清々しさを味わおうとする
人々なのだろう。
徹夜明けの自分とは人種が違う…、ハーレイは思った。

息の掛かったカジノでの揉め事を収め、営業が終わるのを見届けて店を
出たのが30分ほど前。
送りましょう、という店側の申し出を断って、ハーレイは独り街を歩いていた。
既に夜は明け切り、歩むハーレイは歩道に長い影を落とす。

少し冷たい風に頬を撫でられ、ふと顔を上げた先に、彼が居た。
纏う空気の、あまりの違いにすぐには気がつかなかった。

空色のパーカーに、ブルージーンズに白いスニーカー。
赤い首輪をした茶色い大きな犬――ゴールデンレトリバーだろうか――を
連れて軽やかに通りを駆け抜ける。
じゃれ付いてくる犬に向けているのは、これまで幾度と無く見てきた人形の
ような無表情とは全く異なる顔だった。

年相応の笑顔が弾けている。
声を立てて笑い、走りながら飛ぶように跳ねる。
そんな様子に、ハーレイは見蕩れた。

通りの反対側だが、大きなハーレイの姿にブルーも気づいた。
頬にさっと朱が刺す。
リードを引き、くるりと踵を返した後姿に、ハーレイは思わず声を
掛けていた。

「―――待って…!」

どうして呼び止めたのか、分からないけれど。
ブルーは足を止めた。



通りをやや早足で渡ってきたハーレイの、第一声にブルーは面食らった。
怪訝そうなブルーの様子に、向けられたハーレイも首を傾げる。

「何か用があったのかな?」
「……別に…」
「なら良いんだ。声を掛けてしまって…悪かったかい?」
「…どうして…?」
「その…何か迷惑そうだから」
「そんなことは―――…ああ…」

言われる自分の態度に気がついたのだろう。
ブルーはハーレイを見上げて言った。

「あんたに礼を言われる覚えがないからだ」
「礼?ああ、そうか」

ハーレイは食い違いのきっかけにようやく思い至った。
相好を崩す。
普段の強面とのあまりのギャップに、ブルーは見蕩れた。

「君は立ち止まってくれただろう?だから、さ」
「そ…そんなことで…。だ、大体、止まれといったのはあんただろう…!」
「うん、そうだ。だから―――」

ありがとう。
真っ直ぐ向けられた視線と共に繰り返された言葉。
ブルーは答えられず、ぷいと横を向いた。





こんな風に始まった会話は、ブルーの愛犬(ジョミーか?:笑)が話題になる
と俄然弾んで。
実はハレさん犬好きだったりv
そのまま、にこやかに二人は別れるんですが…。

その晩、ブルーはキースに呼び出されます。
うふふ〜、鬼畜な展開で〜す♪