01







はぁあああああ…っ…!

高い声が響いた。
胸の下で、ブルーがびくびくと身体を震わせ白濁を吐き出した。

赤く色を変えた華奢な肢体に満足して、ベッドに起きあがる。
仰向けで脱力した様に横たわるブルーの腹部に、小さな白い水溜まりが沢山出来ていた。
それを、ブルー自身を散々嬲った指先で弄り、ぴちゃぴちゃと音を立てる。

「こんなに出して―――――本当に淫乱だ、あなたは」

白い肌に纏った赤が濃くなり、ブルーはついと顔を逸らす。
怒ったような仕草だけれど、違う。
耳朶は真っ赤に染まり、たった今欲望を溢れ出させたばかりのブルー自身が固くなり始めていた。
水音と"淫乱"という言葉に、悦楽を感じているのだ。
そう、彼は悦んでいる。



もっと―――もっとよくして差し上げます。



私はベッドを下りた。
ブルーと同じ、纏うものの一切無い裸体を晒す。
彼とは違ってまだ一度も吐精していない為、はっきりと起立したままの己を見せつける。

私を映した瞳が熱を孕んで潤み、唇が薄く開く。
零れる熱い吐息が聞こえてきそうだ。
今夜はまだ一度も銜えさせていない、上下の"口"が疼くのだろう。

私は大きな姿見の前に、背もたれのある椅子を運んだ。

「今度はこちらでしましょうか?」

さあ、と誘えばブルーは緩慢な動作ながらも従順に近寄ってくる。
足首に巻かれた黒い皮の拘束具に付いた鎖がじゃら、と音を立てた。










先程まで両足をその鎖でベッドに固定し、後ろ手に拘束したまま舌と唇だけで可愛らしい彼自身を
嬲り続けた。

「もう…やめて…ぁ…んっ」
「本当に…?」

舐めても舐めても、こんなに溢れてくるのに?
やめて、いいんですか?
そう問えば言葉は帰ってこない。
ただ喘ぐだけ。

幾度も精を吐き出させ、少量で薄くなったそれを指で掬った。
彼の唇に近づければ、一瞬の躊躇いの後、舐め始める。

「美味しいでしょう?」

ブルーは紅潮した頬を幽かに横に振る。
けれど、舌は動きを止めない、どころか激しさを増す。
私が触れもしないのに、彼の中心は再び、いや4度目の熱を持ち始めていた。










その熱を吐き出したのが、つい先ほど。
大人しく座ったブルーに云う。
足を椅子に乗せて、開いてください。

はっと顔を上げ睨んでくるが、「分かっていらしたんでしょう」と微笑んでみせれば抵抗することなく従う。
ふるふると細かく震える膝を従順に開くけれど、顔は反抗的に横を向いたまま。

「もっと―――開いて下さい。大きく」

ブルーは唇を噛む。
頬の赤みが増した。

「さあ。大きく開いて……見せて下さい、あなたのヒクつく、奥を」

唇を割り指を咥えさせる。
血が滲み始めた彼の形の良い柔らかいものに、これ以上傷を付かせる訳にはいかない。
押し込むと、噛まれた。
鋭い痛みに顔を顰めると、ブルーは噛みついた私の親指を舐め始める。

ぴちゃ、ぴちゃ。
水音が響くごとにブルーの太股が左右に開かれていく。
すっかり起立した彼のものは綺麗なピンク色に膨らみ、腹に頭を付けていた。
その奥、溢れる先走りに光る部分はやや強い赤みを帯びてヒクついている。

私は彼の座る椅子の後ろに立ち、少し屈むと中指を伸ばし欲しがる部分に触れた。
ブルーが息を呑む。
中心に当てると、うねる動きに吸い込まれそうだ。

こんなに欲しがって……。どうぞ、味わって下さい。
ぐいと押し込む。

「ひあああ…っ!」

仰け反る身体に根本まで突き入れた。
小刻みに出し入れすると、断続的な声が上がる。

「あ…、あっ、あ、あ…」

彼の中は火傷しそうに熱く、うねっていた。
ここに入れる瞬間を想像する。
身体の中心に熱が集まってくるのが分かった。

猛り、一回り大きくなった私に触れてくるもの―――――白く細い指。根本を押さえている。
先端に熱い吐息が感じられた。
ブルーは1/3ほど舌を出し、唇を開いている。
私で、上の口をいっぱいにする為に。

溢れてしまう声を堪えて舌を伸ばす。
括れの下部に唇を寄せた。
音を立ててキスをすると、アイスキャンディーでも舐めるように大きく舌を動かし始める。
堪えきれない、途切れ途切れの艶のある声が、くぐもったものに変わった。

「…んふ……ぁふ…んん…っ…」

膨らんではち切れそうな先を何とか咥内に納め、上顎に押しつけたり、べったりと舌を這わせたりしている。
鼻から息と声を漏らして、懸命にしゃぶっていた。

欲しい。
欲しい。
もう我慢出来ない。
これを頂戴。

明確な言葉ではないけれど、ブルーの全身がそう訴えてくる。
ちらりちらりと正面の大きな姿見に視線を投げ、映すものを確認しその度に鼻を鳴らし、震えた。
そして、上目遣いに視線を寄越す。
羞恥と快楽に全身を赤く染め、私の猛るものと共にある言葉を欲しがっているのだ。

それは。
きちんと口にすることが出来るまで、一番時間が掛かった言葉。
私が最も云いたくなかった言葉だった。
今でも。

けれど彼が望むから―――――私は口を開く。

「―――この、淫乱…!」










そのまま椅子の上で貫いた。
私もブルーも限界に近かったから、解すこともせず足首を掴んで突き入れ、激しく穿った。
数分も経たず、私たちは白濁を放った。

意識を飛ばしてしまったブルーをベッドに運ぶ。
秘所と背中に赤いものが滲んでいた。

また、傷つけてしまった。
二つの傷口に唇で触れる。
口に広がった幽かな鉄の味に込み上げてくる感情を、奥歯で噛み殺した。

暖めたタオルで身体を拭い、手当をした。
もう手慣れたものだ。
彼を貶める言葉を吐き、苦痛と快楽を同時に与えるのと同じくらい……。





そう―――――ブルーはそうされないと感じない。
もう長いこと、ずっと。





初めてブルーの"性癖"を知ったのはアルタミラ事変と呼ばれる虐殺からまだ2年も経過しない頃。

あの地獄から辛くも脱出したミュウたちは宇宙の片隅で、息を殺して生活していた。
見つかればどんな酷い事をされるか、想像するだけで肌が粟立つ。
その上"処分"は確実だ。

彼ら人類に見つからない為にどんなに注意しても、し過ぎるという事はない。
脱出に使用した輸送船を少しずつ改造し居住スペースを作り、皆で同じものを分け合って食べ、
暖を取るのも凍死しない程度に制限して。
息を潜め、肩を寄せ合って生きてきた。

1年が過ぎ、少しずつ生活に余裕が生まれ、個室を持つ者も出てきた。
その超絶したサイオンのため自然と皆を率いる立場になったブルーと、何故かいつも皆の調整役と
なってしまう私もその一人になった。

ある夜。
ゼルからもたらされた船体状況報告に高い緊急度を認めた私は、深夜を過ぎているにも関わらず
ブルーの部屋を訪れた。
入室の許可を求めるが、応えは無い。
だが、明日の朝まで待てないと判断し、自分だけが知っている緊急のコードを打ち込み中に入った。

途端、良く憶えのある匂いとくぐもった声に全身を包まれる。

「んんっ!ぁはあ…ぁ…ん……ぅう……っ!」

ベッドで絡み合う身体、身体、身体…。
抜けるように白く細い身体に、3人の男が群がっていた。

「ぁぁぁ…ぃ…う…は……く…っ!…」

一人は仰向けのブルーの手首を掴んでベッドに縫い止め、上から口を貪る。
左脇に跪いている者は、胸の左の突起を舌で舐め右を指先で押し潰している。
残った者が華奢な足首を掴み広げ、その中心に顔を埋めて水音を立てる。

犯されている?!
それも仲間に!!

「止めろっ!」

怒鳴り声に一同は顔を上げた。
その表情を見て―――私は驚く。

「ハーレイ、どうして入ってきた……」
「ブ…ブルー……」

これは何事ですか…?
そう問う声は、多分震えていた。

解ってしまったから。
空ろな目をしていたのは乱暴している筈の男たちで、ブルーは頬を紅潮させているものの
至って冷静な目をしていたのだ。

認めたくない答えを聞きたくなくて、私は声の震えを止めることが出来ない。
そう―――――彼は自らこの男たちを招き入れたのだ、抱かれるために。














----------------------------------- 20071026