ナスカの空はラベンダー色
大地は乾いた赤い砂色
早朝の地平線に一筋の朝日が差すとき、瞬く彼の人の瞳を想う



―夢で逢えたら―



身重のカリナのためには大地に足をつけ、そのエネルギーを分けてもらうべきだろうという意見もあり、
主だった医療セクションはナスカに建設された居住区の方へ重点を移していた。
ジョミーを始めとした若い世代の仲間達も、一日の大半は地上で過ごすようになっている。
シャングリラは長旅の疲れを癒すべく、船体の修復、調整に余念がない。

惑星に降下した時に、ジョミーがハーレイにかけた第一声が
「キャプテンはどうする?」だった。
「地上の指揮は自分がとる。だが、貴方や長老達はどうするのか」
それが船の事ではなく、動かせないブルーのことを慮っている言葉だと知る皆は顔を見合わせた。
「儂はエンジン回りその他の修理があるから、留まらせてもらう」
ゼルの尤もな意見にハーレイは頷き、教授を見遣った。
「では、私は子供達の付き添いがあるから」
「何言ってんの!もう立派な大人じゃないか、ホントにこれだからみんなから
 子供扱いしないでって言われるんだよ」
「いや、それはそれでだな……」
「あたしは降りるよ、見れるものは何でもこの眼で見ておくがモットーだからね」
教授とブラウはそう言い合いながら、お互いニンマリ笑みを浮かべる。
「フィシスさまにも是非に一緒に来て頂いて、この先の事を視ていただかないと」
「……落ち着いたら参らせて頂きますわ」
少々の含みのある台詞に、思い至る事があるのか、以外とフィシスも赤い大地に降りることに
あっさりと同意する。
「では……わたくしはシャングリラに」
エラが控えめに意見して、最後にハーレイが残った。
「……船長が船を離れる訳にはいきませんから」
しごく予想通りの台詞に、ジョミーが小さく笑った。
「僕もしばらくは行き来することになるだろうけどね。
 ……ここで皆でもう一度仕切り直して、地球を探そう」
「はい、再度情報収集を……」
「キャプテン、貴方も少し休んでください」
思いもかけないジョミーの言葉にハーレイが驚いて顔を上げた。
「ブルーの側を離れる訳にいかない……が本音だろ、まったくそんなだから若い子達に
 先越されていつまでも独り身なんだよ」
ブラウがやれやれと言った風に首を振る。
「まったく困った船長じゃなぁ、儂らが気を利かせなんだら仕事仕事で宇宙にいる時と
 変わらんではないか」
ゼルも呆れたように呟き、一番始めにブリッジから退出していった。
「ドクターがあとで改めて挨拶にくるようですよ、何かあったら呼んでくださいね」
頬を赤らめ言葉も出ないハーレイに、エラまでがくすくすと笑い、ブリッジから出て行く。
「ソルジャー・シン。私は……」
「ええ、だから。僕としてはキャプテンにシャングリラを任せます」
そして少しのやっかみも込めて
「これは貸しですから」

じゃあ、おやすみなさい 良い夢を

ふわりとマントを翻し、ジョミーの後ろ姿も見えなくなった。
春の嵐のような一時が過ぎても、まだ気持ちの乱れを収拾できないまま、
ハーレイは一人ブリッジに立ち尽くしていた。

夢で逢えたら
何とあなたに報告しよう
夢で 逢えたら
あなたは 笑って 聞いてくれるだろうか
それとも 少し 困った顔をして
まだまだだねと____













---------------------------------------------------- 『頭の冷蔵庫』のalmaさまから頂戴しました! 素敵な長老ズにもう萌えが止まりません(><) 本当に、報告を受けたブルーさまは何て仰るでしょうね… ありがとうございました!