Croix Noireさまのフリー配布vvv

祝!初ソロモン様イラストGetです〜〜〜っ











―― 妄想SS ――
(お目汚しですが・・・)

シュヴァリエは眠らない

だけど
こんな日はあなたが恋しい

せめて夢の中ででも
あなたに逢いたい・・・・・


帰宅したソロモンは着替えもせず、ベッドに倒れこんだ。
天井を見上げ、ため息をつく。




勤務先の病院でふと目にした何気ない光景。

入院中の恋人を見舞ったのであろう青年と病院着の恋人が
院内の珈琲ショップで睦み会っていた。
店の隅、窓際の小さなテーブルを挟んで向かい合う。
肘を付き、身を乗り出して会話していた。

視線を絡め、微笑みながら、それは楽しそうに。

僅かな休憩時間にサンドイッチとカフェオレの軽い食事を摂っていたソロモンは、
それを見るとは無しに眺めていた。

青年は自分の珈琲カップを横に避けると、ポケットから何枚かの写真を取り出した。
二人の声ははっきりとは聴こえないが、かつて一緒に行った旅先のスナップらしい。
若い女性が一枚を手に取り、指差す。
その写真を向かいに座る青年が覗き込む。

子供連れが立て続けに席を立ち、店内の騒めきがトーンダウンした。

二人の会話が切れ切れながら聴こえてきた。

「――のドレス、良く似合って―――」
「また、この―――に行けるかしら?」
「当たり前だろ。俺が――――連れてってやるって。世界中どこにでも・・・・・」

青年の手が若い女性の華奢な顎を包む。
二人はそっと唇を寄せた。


既視感。
ソロモンの脳内に夕暮れのマンハッタンと白いドレスが蘇る。
鋭い頬の痛みも、柔らかい抱擁の温もりも。


頬を張られる音は響かず、静かに唇を離した二人は見つめあい微笑を交わす。
青年が再びポケットから何か取り出した。

「きっと、このドレスに映えるよ」
青年は取り出した綺麗な青色のケースの口紅で女性の唇に色をのせた。
深くて鮮やかな赤。

「ほら、良く似合う」

満足げに笑って、華やかな唇を指でなぞった。
自然に二人の顔が近づき、また唇が重なる。

隣のテーブルの男性が咎める様に咳払いをしたが、二人は気にしない。
今度は少し深く、長い口付け。
顔が離れると、女性を彩っていた華やかな赤は消えていた。

「次はあの場所、あのドレスで見せてくれよ、な」
「それまでこの口紅をこの定位置に置いておいてくれれば、ね」

女性は青いケースを青年の左ポケットに滑り込ませた。
よろしくね、と服の上から愛おしげにぽんぽんと叩く。


ふいと顔を背け、ソロモンは席を立った。
心の中のさざ波が、小さな波であるうちに―――

どうしても、あの二人に重ねて思い描いてしまう。
自分にはもう叶わないと解っているのに・・・・・




本当に眠る事が出来たなら。
あなたが現れてくれなくても、僕があなたの夢の中まで会いに行く。
必ず―――――

ソロモンは顔を歪めた。
眉根を寄せ、どこか苦く、泣き出してしまいそうな表情。

「・・・小夜・・・・・」

ベッドの上のソロモンは、腕で両眼を覆った。





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