All I want for christmas is you


 彼の生まれ育った所と私の生まれ育った所は
ホワイトクリスマスが当り前の土地で。
故郷へはまだ帰れないけれど、少しでも気分を味わいたくて
クリスマス前、短い休暇にオーブを離れた。

町中にあふれる華やかな飾りと陽気な音楽、それだけで
なんとなく心が浮きたつ。


賑やかに行き交う人々の波にのるようにして散策し、
公園沿いの通りに出た私たちは、ちらほらと舞う雪の中ゆっくりと歩みを進めた。


「ムウはサンタクロースにお願いするとしたら、何が欲しい?」
こんなことを聞いてみたくなるのも、この雰囲気のせいかもしれない。
「うーん、特にないなぁ。マリューがいればそれでいいし。」
「なんにもないの?」
「そういうマリューは?」
私は、と言おうとして、彼と同じ答えしか浮ばないことに気づく。
それを察したのか、ほらね、といわんばかりの笑顔。
私の考えることは何もかもお見通し、と言われたことがあったっけ。
「ムウの笑顔、がいいわ。」 だから少しだけ答えをかえる。
「そんなのマリューが笑っていればいくらでも。」
ん?と少し間をおいてから、青い目を楽しそうに細めて笑う。
「私もムウが笑っていてくれたらいくらでも。」
「なんか堂々巡りだな。」
「そうね。」
そして二人一緒に笑う。

本当はあなたの寂しそうな顔も怒った顔も好き。
あなたが私のそばにいる。あなたと私と一緒にいる。
この瞬間が好き。
だからこうしていられれば、他には何もいらないの。

「こんな言葉がすんなり出てくるのも、きっとこのお祭りムードのせいね。」
ちょっと恥かしくなってそう付け足したら、なんだよそれ、と彼がまた笑った。

その笑顔に見とれていると、蜂蜜色の曲線が揺れて私の体を包む。
「俺も。こうしているのが一番好きだな。」
ぎゅっと抱き寄せられて、彼の声がぬくもりと共に体に直に伝わる。
「一緒にいれば温かいし。」
「ね。」

今年のクリスマスは願い事はないの。
かわりにサンタクロースと神様にお礼をいうわ。
彼を還してくれてありがとう−−って。






Light Wingさんの2005クリスマス・フリーです♪
めちゃめちゃ素敵な絵と文章にノックアウトされました〜






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