明けない夜はないなんて―――嘘だ………





また、あの男だ。
屈強な兵士に引き摺られるように通路を進むブルーの顔が歪んでいた。
後ろ手拘束された腕が悲鳴を上げている。
強力なバネのついた拘束具で、剥き出しの金属の輪で締め上げられた二の腕と手首には
血が滲んでいた。

ドクター・ヴァルクールの実験室。
脳の最深部まで抉るように調べられる。
何度も、何度も。
あまりの激痛に気を失っても、再び与えられる痛みに呼び戻される。
そのため、数え切れないミュウが実験中に狂死した。
だが、そうして集められた血に塗れた報告書が彼の地位を押し上げる。
ミュウ研究の権威として、関係機関では名が通っている人物だった。

同時に、彼の芳しくない性癖も―――。









白い部屋










実験室にブルーを放り込むと、兵士たちは這う這うの体で逃げるように部屋を
後にする。
この後に繰り広げられる饗宴を目にしてしまうのを恐れて。
部屋に響く悲鳴を耳にしたくなくて。

「よくきた、ブルー」
「……………」
「そんな目をしたらいけないと、何度も言っているだろう?私の―――」

我慢が利かなくなるじゃないか…!
ヴァルクールは手にしていた、長い細い棒で床に転がされたブルーを
滅多打ちにした。
棒が撓り、空気を切る音と皮膚を叩く音が響く。

「―――っ!…く…っ」
「ふはは…!さあ、啼け!叫べ!」

もうずっと、こうだった。
呼び出されても実験など行われない。
叩かれ、嬲られ、犯される。
その繰り返し。

細い棒で打たれ、皮膚が裂ける。
ブルーの白い身体が血に染まっていく。
青白い床にも、真っ赤な飛沫が散った。





打ち据えてもブルーの身体が反応を示さないようになると、ヴァルクールの
右手は鞭代わりの棒を投げ捨て、代わりに血で汚れた銀の髪を掴んだ。
ぐいと持ち上げ、顔を近づける。

「まさか、もう仕舞いか?今日は随分早いな」
「…ふ……ぅ…くっ…」
「ああ…昨日はテレンスに可愛がられたんだったな。200度のサウナで
 1時間だったか…良い汗を流したか、化け物?」

言いながら、頬の血を指先で塗り広げた。
白い柔らかい肌を、汚していく。

更に顔を近づけた。
ヴァルクールは舌を伸ばし、頬の傷を舐める。
ぴちゃり、ぴちゃり。
生じる音に、ブルーの顔が僅かに歪む。

蠢く舌は斜め下に移動し、苦しげな呼吸を繰り返す唇に侵入した。
僅かに開いたブルーの薄いそれをこじ開け深く差し入れると、自身の唇で覆う。

「…ん……―――っ!?つっ…このっ!」

ブルーから慌てて身を離したヴァルクールの口元から、血が流れていた。
掴んだ髪で振り回すようにして床に叩きつけると、細い身体を蹴り始める。

「この…っ、このぉっ!!実験動物の分際でっ!」
「…ぐ…ぅ……」
「逆らえば逆らうほど痛い目を見るのはお前だぞ!馬鹿が!化け物がっ!」

激昂したヴァルクールは息が上がるまで蹴り続け、やめると服を引き裂いた。
下穿きまで破り全裸にすると、首の輪を掴む。

「あ…が……ぅ…ぐう…」

首が絞まるのにも構わず無理やり指を入れ、奥の部屋に引き摺っていった。
床に途切れることなく、赤い筋が残る。

奥は純白の間だった。
窓はなく、壁も天井も床も白一色。
壁から生えた鎖も、冗談のように白く塗られている。
唯一つ置かれた大きなベッドも白で、枕もシーツも真っ白だった。

そのベッドに投げ上げる。
シーツが血で汚れた。
ヴァルクールの口元が歪む。



紅と白―――その対比が、この男の劣情を煽るのだった。



唇から涎を零し、息も絶え絶えなブルーに圧し掛かる。
うつ伏せの小さな身体から腕の拘束を外して、腹の下に枕を入れた。
背中を押し潰し、尻だけを持ち上げる。
ベッドヘッドから極小さなチューブを取り出すと、先端をブルーの秘所に突っ込んだ。
握って内容物を注入すると、いきなり猛った自身を突き入れた。

「ぎ…いゃ…っ、ぐぁ…!」

解されることも無く、大人の凶器を呑み込まされたブルーの窄まりから鮮血が零れた。
痩身ながら大柄なヴァルクールのものは、身体に見合った大きさを誇っている。
それが自身の好みに合った状況で更に巨大に膨らんでいた。

直前に入れられたチューブの中身は、潤滑の用途も無ければその役割も
果たせない程の量でしかない。
文字通り身を引き裂かれる痛みに、きつく閉じられたブルーの眦から涙が伝った。

内壁を味わうように緩やかに腰を使いながら、ヴァルクールは秘所の血を指先で掬い、
白い背中に塗りたくる。
細くてろくに筋肉もついていないその部分は、粗末とはいえ服を着ていた為、
先ほどの擬似鞭打ちから逃れていた。
傷の無い白に赤い指の跡を付ける。

痛みから震え、逃れようとうねる少年の背中と、その少年の血で朱に染まった指先。
ゾクゾクしたものがヴァルクールの背骨を駆け下りた。
身体と脳内を焼く灼熱に従って、激しく穿つ。

ヴァルクールは、視線を上げた。
シーツに投げ出された、腕と手首についた赤い輪からも血が滲む。
汚れた銀糸から覗く白皙は苦しげに歪められ、唇から溢れた唾液がシーツに
しみを作っていた。

「…ああ…ひ…ぃ……、ぐ…ぅん…っ…」

その細い悲鳴も、ヴァルクールにとっては天上の調べだ。
本当にこの身体は素晴らしい…!
ぐいと押し込み、深い部分に吐精した。

吐き出した余韻が去るまで、そのまま尻に腰を押し付け続けた。
ひたすらに拒絶し硬く窄まっていた狭い筒が、微かに動き始めている。
にやりと笑ったヴァルクールは、萎えても大きい自身をずるりと引き抜くと、
ベッドヘッドに再び手を伸ばした。
小さなリングを摘み上げ、うつ伏せたままのブルーの足の間を弄(まさぐ)った。

「もう勃起してるのか。薬が良く効いたのか、それとも―――」

苦痛がイイのか…?
ええ、化け物!

耳元で怒鳴りながら、小ぶりな茎を強く握って扱く。
ブルーの背がしなった。

「―――ああ!んぁああああ…っ!!」

完全に勃ったブルー自身の根元に、手にしていたリングを嵌め込み、締める。
吐精をコントロールされる器具に喘ぎながらもブルーは手を伸ばすが、それが
到達する前に衝撃が傷だらけの身体を襲った。
ヴァルクールが、再び貫いたのだ。

ブルーの奥、耐えられないほどの快感を呼ぶ部分だけを狙って、執拗に激しく、突く。
先ほど吐き出した白濁が掻き出されて、裂けた秘所から溢れ出して来た。
血と混じった液体がささやかな袋と震える太股を伝い落ち、またはち切れそうな茎を
流れる。

「い…やぁ、やめ…っ!」
「血塗れなのに喰らい付いてきやがって、何が嫌だ…っ!」

ほらほらほらっ!
ヴァルクールは腰を穿ちながら、細い身体を揺さぶった。
ブルーの茎の先端から流れるものの色が薄くなっている。
大量の先走りが溢れ出し始めたのだ。

「イイのか、化け物!」
「ひぁあああっ!やぁ…っ!」
「キュウキュウ締め付けやがって、下等生物がぁ…っ」
「いやぁあああああああ……!!」

悲鳴と、罵声と、肉を打ち付ける音。
ヴァルクールの実験室の明かりは、明け方まで消えることは無かったのだった。



















---------------------------------------------------- 20080211 日記からサルベージ こんな夜を幾つ越えてきたのか どれほどの痛みを与えられたのか 想像も付かないけれど でも彼は諦めない 人類と分かり合えると ヒトは赦し合えるのだと