webclap 02 20080824up
ふうっと息を吹きかける。 向こうが透けて見えそうな程薄くて小さい耳朶を、そうっと引っ張った。 「痛いよ…!」 同じように小さい造りの唇が苦情を呈する。 膝の上で銀糸が僅かに動いた。 まだ耳掻きを入れたままだったから、「危ないですよ」と声を掛ける。 すると瞳だけが動いて、私を捕らえた。 「あんまり引っ張るからだ」 「こうしないと、奥が見えないんですよ」 「僕が頼んだ訳じゃないよ…!」 あまりに子供じみた台詞に、苦笑する。 はいはい、と返事をして手を動かす。 細い耳掻きの先がコソコソと動くものに当たるのだ。 今日は何としてもこれを取って仕舞わねば。 私は棒の先に意識を集中する。 ―― みみかき ―― ブルーは、耳掻きが嫌いだ。 私などはさっぱりするし気持ちがいいと思うのだが、ブルーは耳掻きを嫌がる。 「ハーレイ、早く済ませてよ」 「分かりました」 蒼の間のベッドに座った私の膝に、横を向いて寝そべったブルーが頭を載せていた。 黒いアンダーの上下だけで、長く身体を伸ばすその姿は、まるで猫のようだ。 目の前の優雅な曲線に見惚れていたが、そんな時間はない。 こんな風にじっとしていることなど滅多にないのだから。 気の変わらないうちにと、私は背を丸めてブルーの耳の奥を覗き込む。 「……うぅぅ…、んっ…!」 ブルーがびくっ、びくっと身を捩る。 前にも言っていたが、尻の辺りがムズムズするのが我慢ならないらしい。 でも、"大きいもの"が見え隠れしているのだ。 我慢して貰わねば。 「もう少しですからね…」 「んん…分かっ……」 でも…早く…! ブルーの細い指が私のスラックスの上を蠢き、膝裏をぎゅっと掴んだ。 「―――!」 私は息を呑む。 ムズムズから逃れたくての仕草と台詞だと分かっていても。 ぎゅっと瞑った瞼が、色を変えたうなじが、震える身体が、"あの時"の 彼の姿を思い出させるのだ。 でも、今日の目標がすぐそこだ。 私は自分の身体の熱を無視して、そいつを掻き出すことだけに意識を集中させた。 息を詰め、指先を持ち上げる。 落とさないようにそうっと、そうっと。 ……取れた。 ふうっと詰めていた息を吐く。 彼の耳には不似合いなそれを、私は薄い紙に包んだ。 「こちらは終わりましたよ」 肩を揺すると、固く瞑っていた瞼が解かれる。 同じように開かれた唇から、はあ…っと零れた息も熱い気がして。 私は下がらない自分の熱を振り払おうとひとつ頭を振って、ブルーに反対を 向くように言った。 「まだ…するの?」 その顔でその台詞を言いますか…。 潤んだ瞳と上気した顔で、ゆるゆると気怠げに起き上がるブルーに、内心でこっそり ため息をつく。 「こちらもすぐに済ませますよ。さあ―――」 口を尖らせたもののブルーは素直に従い、今度は私の腹部の方を向いて横になる。 ぽふん、と銀糸を落とした。 掃除してしまおうと覆い被さった途端、「アレ…」とブルーが呟く。 動いた手が額に向かったのに気付き、慌てて腰を引いたが間に合わない。 「ハーレイ…」 何考えてるの…? ブルーは私の股間に触れたまま、ちらりとこちらを見上げた。 「すっ、すぐに終わらせますから…!」 「こんな状態で…?」 僕、怪我するのやだよ。 ブルーはくすりと笑うと、猫のように身体を伸ばした。 口を開いて顎を上げる。 「止めてください…!」と慌てる私の、それでも勢いを失わないものの先を食んだ。 布越しであったために、歯を立てられている――勿論加減はされている――にも 関わらず、背筋を通ったのはじんわりとした快感で。 私の顔が僅かに歪んだのを横目で見て、ブルーはにやりと笑うと釦に手を掛けた。 「耳掻きは…中止だな」 嬉しそうなブルーの言葉を聞いて、確かに"こんな状態"で耳かきなど無理だなと思う。 私は細い竹の棒をベッドサイドに置き、少し足を開いた。 ブルーは剥き出しにした先端に何度か舌を這わせ、トロトロと溢れる先走りを 舐め取っていたが、寝たままではしづらいのか、ベッドの上で四つん這いになる。 アンダーだけで頭を下げ、尻を高くした格好は、既に熱に浮かされている私には 刺激的すぎる。 自然、手が伸びた。 「触っても…?」 許可を求めれば(嫌だって言ったって、するんだろ…!)とサイオンで答えがくる。 いつもではないだろう、と反論したかったが、今の自分を振り返ればその通りだと 苦笑が漏れる。 もう、我慢出来ないのだから。 私は己の指を口に含んだ。 背中の方から彼の下履きの中へ入れ、滑らかな尻を揉んだ。 「んっ!」と身動ぎする双丘の谷間に沿って下り、まだ固い窄まりに触れた。 周辺を解すように押すと、銜えられている私自身が振動する。 くぐもった声を上げて、それでも私を放さないブルーが震えた。 乾いた蕾に唾液を塗し、指を押し込む。 ブルーの身体が前に逃げた。 「―――んっ!…んんっ!…」 空いている手で頬を撫でながら、指を増やす。 2本を第二関節まで差し入れ、前後させる。 ブルーが腕を折り、私の太股に顔を落とした。 「んぁ…っ、ダメ……歯…立…ちゃ…そ…うだ…」 それだけを絞り出すように呟き、後は嬌声を上げる。 ビクビクと震え、さっきと同じように私のスラックスにしがみつく。 「あっ…あっ!や…も……ああっ!…んあっ」 ブルーの前を探れば、しっとりと濡れ、また痛い程に張りつめていた。 私が指を引き抜くと、細い身体は崩れ落ちる。 浅い呼吸を繰り返すブルーを抱え上げ、後ろから抱き締めた。 「欲しい―――あなたが…」 耳元で囁けば「うん」とだけ答える。 私はブルーのアンダーの下を脱がせ、足を開かせた。 解れてヒクつく蕾に自身を押し当てるれば、ブルリと震える。 押し込むことをせず、じっとしていると焦れるのか、ブルーが顔だけ振り向き ひっきりなしに熱い息を零す真っ赤唇を開いた。 「―――早く…!」 赤く色を変えた瞳は潤んで、今にも雫を零しそうだ。 腰を支えていた腕を緩め、窮屈なアンダーから解放したブルー自身を掌で包んだ。 手を上下させれば、そこは派手な水音を立てる。 「は…ハーレイっ!」 「―――あなたが、入れて…」 はっと見開いた眼は羞恥からくる怒りを覗かせたが、それはすぐに見えなくなった。 ブルーが身体を離し正面を向いて、私の膝に手を付いたから。 くっと腰を持ち上げ、ゆっくりと下ろした。 私のものはブルーの唾液に塗れていたから、すんなりと呑み込まれていく。 「あっ、あっ…はぁ…あ……ああっ…!」 背中を反らせ、撓らせながら根本までを身体に収めてしまうと、ブルーはひとつ 大きな息を吐いた。 ちらりと私に投げた眼は、すっかり蕩け切ったもので。 私の熱もぐんと上がる。 「ブルー…動いて…」 「…ん……」 浅いながらも、ブルーが自ら腰を振る。 溢れる声は呑み込むときよりも切なげなものだった。 上下だけを繰り返していた腰は次第に不規則な円を描き、妖しく揺らめく。 たった1人の観客として、もっと、もっとその蠱惑的なダンスを見ていたかったけれど…。 もう―――限界。 私は揺れる身体に腕を絡めて、背中から抱き締めた。 その所為で繋がる部分は深くなる。 ブルーの高い嬌声が響き、その柔らかい粘膜が私を締め付けた。 甘い甘い声と、甘い、甘い刺激。 堪えきれずに滾りを放つ。 すぐにスラックスに温かい湿った感触が広がった。 ブルーもまた、達したのだ。 腕の中で脱力し、身体を預けて居る。 顎を取り後ろを向かせ、空気を求めて喘ぐ唇をそうっと噛んだ。 誘い出されて、ブルーの舌が私の唇をなぞる。 ぴちゃ、ぴちゃ。 水音に、抜かないままの己が再び熱を持ち、膨らみ出す。 私はブルーを掌に包んだ。 至近距離で、瞳がうっすらと開く。 「…まだ、するの…?」 ブルーもまた、分かっているのだ。 私を煽った同じ台詞を口にする。 …ええ、と答え、私も同じ言葉を返した。 「こちらもすぐに済ませますよ…。さあ―――」 押し倒し、アンダーを捲り上げる。 ブルーも手を動かし、私の服を脱がせていく。 釦を全部外したところで手を止め、くすっと笑った。 「本当にすぐ済むの…?」 「無理でしょうね…」 済ませるつもりもありませんし。 さらりと言う。 その答えが気に入ったのか。 ブルーの細い腕が首の後ろに回る。 引き寄せられるまま、口づけた。 深く、激しく。