ナスカにダイブする直前、ハーレイに届いた思念。
強いけれど拡散していない。
ただ、まっすぐにハーレイにだけ向けられた思い。





『言い忘れたことがあった』



『僕は、ジョミーに助けられた後すぐに眠ってしまったから
 言えなかったのだけれど』

『今、皆に伝えるにはタイミングが悪すぎる
 みんなナスカを救おうと集中しているし』

『悪いが落ち着いたら皆に伝えて欲しい』



『ありがとう、と』





嫌です
ハーレイは即座に返答をした。

あなたが伝えればよろしいでしょう
全てが終わった後、お戻りになられたら、ご自分の口から





『解っているくせに、意地悪な物言いだね』
 ハーレイ』

『お前だって感じているだろう
 僕の思念の細さが』



『これが今の僕の全て』



『下で使い果たしてしまうよ
 いや、辿り着かないかもしれない』

『無論そんな情けない真似はしない
 何があっても阻止してみせる』

『例え、この身体が消え、思念だけになっても、やり遂げるさ』

『だから安心していい』





ハーレイは艦長席でスクリーンを見ていた。
でも、彼の瞳には何も映っていない。
"見えて" いるのは、紫のマントに銀の髪の細い姿だけ。



勿論信じていますよ
あなたが、ジョミーが、私たちを守って下さることを

あなたが戻られることを……ね





『ハーレイ…』





お戻り下さい、必ず―――





『僕に嘘を付かせる気かい?』





いいえ
帰還して下されば嘘にはなりません





『……ハーレイ』





ブルーの思念にため息が混じる。
少し微笑んで、仕方が無いなあ、と呟く姿が見えるようで。
今はまだ繋がっていると思えるこの手を放したくなくて。



あなたがお戻りにならないのなら
わたくしも―――





『おまえは付いてくるな―――!
 これは、命令だ』





…ソルジャー……
思いもかけない強い"口調"に言葉が詰まる。





『おまえは、ついてくるな
 ハーレイ』



『お願いだから……』



『感謝している』



『言葉では言い表せないくらい』



『そして――――――愛している』

『愛してる、ハーレイ』






「ブルー………っ…!」
席を立ったハーレイに、最後の言葉が届いた。









『……ごめん…』









青い光が、地上に降っていった。

















----------------------------------- 求め、願った、そのたった一言があれば生きていける あなたを待って、この先の道を進む事が出来る でもそれは、我儘でしょうか…… 20070718