sweet sweet stories 02
もう、起きたのか? その声はキッチンのシンクから。 目を向ければ大きな背を丸めて、何か手を動かしている。 今日は日曜日だから早起きしなくてもいいんだけれど、習慣でな。 そう続く声は少し恥ずかしそうだった。 僕もカウンターを回って、隣に立つ。 先生の手にあったのは―――トースト…? 白いカッテージチーズを塗っていた。 大きな手を器用に動かしている。 年だからじゃないの? 揶揄ってやれば、「こらっ」という声と共にこつんと頭をぶつけられた。 微笑みながら先生は、トーストをくるくると回して、かなり厚めにチーズを 塗っていく。 4枚ほど塗り終わると、用意してあった蜂蜜の壜を手に取った。 どうするの? そう問えば、「こうするのさ」と大きいスプーンで黄金色の滑らかな液体を掬い、 チーズの上にかけた。 とろり…とろり…。 白いチーズと朝日を浴びて光る蜂蜜がとっても綺麗で。 僕はうっとり見蕩れていた。 美味いんだぞ。 その台詞とともに差し出されたものを、ぺろっと舐めてみた。 口の中に広がる蜂蜜の甘みと、チーズの豊かで深い味が、鮮やかな コントラストをなす。 齧ってみた。 本当に美味しい…! 僕は表情でそれを伝えると、先生の腕を掴んで引き寄せた。 そのまま食べる。 ちょっとお行儀が悪いけれど、キッチンで立ったままだ。 急に空腹を訴え出した欲求に従ったのだけれど、それ以上に、この場で 食べたかった。 柔らかい朝日に満ちた、先生の立つキッチンは温かくて。 この空気と一緒に味わいたかったのだ。 困ったように微笑んでいたけれど、先生は何も言わず僕の好きなように させてくれた。 半分くらい食べ終えた所で、つつ…と蜂蜜が零れ落ちた。 金色が褐色の肌を伝う。 思わず舌を伸ばした。 顔を傾けて、舐めとる。 柔らかい甘さに目を細めて、舌を動かした。 べたべたになっちゃったね。 すごく甘いよ、と顔を上げた途端、僕は硬直した。 先生の視線に射抜かれる。 目を逸らさず、先生はゆっくりと僕の舐めた部分に顔を寄せた。 舌を出してぺろりと舐め上げる。 本当だ、甘いな…。 あ…。 僕の身体が疼いた。 急に熱くなる。 今日だって明け方近くまで…。 意識を失うように眠ったのだ。 イった回数だって、覚えていないほどで。 何よりまだ、後は濡れているというのに……! でも身体を寄せてくる先生に逆らえない。 いや、逆らえないのは自分の身体の奥から沸き起こる熱に、だろう。 先生は食べかけのトーストをカウンターに載せて、僕に腕を伸ばす。 べたつく手が頬に触れて、口付けられた。 シンクに尻を押し付けられて、口内を貪られる。 ん…ふ…。 先生の舌も、僕と同じ味、匂い。 それが何だかくすぐったくて、心地良い。 僕は先生の肩をぎゅっと掴んだ。 ジーンズの前を寛げられて、手を入れられた。 足を閉じることは出来ない。 むしろ、もっと…もっと…と自分から開いてしまう。 キスだけでそそり勃ってしまった僕は擦られて、声を上げるけれど、 それはキッチンには響かない。 まだ、唇を塞がれているから。 頭の芯がクラクラする。 抱え上げられて、シンクに軽く乗せられた。 ジーンズは剥ぎ取られ、床に投げ捨てられる。 バランスの悪い格好の僕は、太い首に手を回して先生に縋りついた。 …いいか…? 耳元で囁かれた。 掠れた声。 ここで抱いていいか、と。 朝から、こんな場所で、と。 僕だってそう思う。 はしたないとか、恥ずかしいとか…。 確かにそう思うよ。 でも、我慢出来ないんだ。 僕は頷く。 先生は忙しなく、指で蜂蜜を掬った。 シンクに垂れるのも、服が汚れるのも気にせず、僕の後ろに塗りこめる。 そのまま指を入れられた。 明け方近くまでの行為の所為で、そこはまだ…。 柔らかいな…。 呟かれて、僕は顔から火が出るかと思った。 何か言い返そうとしたけれど、言葉なんて出ない。 広い背中を拳でポカポカ叩く事くらいしか出来なかった。 早く、欲しいよ…っ…! 精一杯の言葉を搾り出す。 先生は「ああ」と答えて自分の物を取り出すと、僕の蕩けている場所に あてがった。 物凄く、熱い。 それがぐいと入り込んでくる。 高い嬌声を上げてしまう僕の耳に、先生の声が届いた。 俺もだ…! 低く囁かれた声は、やっぱり掠れていたのだった。
------------------ 20081021 ハレ先生のトースト 美味しいですよ