The seat of the soldier




意外に騒がしいんだな。
ソルジャー服を着て初めて上がったブリッジで、ジョミーはそう思った。
サイオンで会話が出来るミュウではあるが、やはり声に出して交わすものが
主であるらしい。
様々な会話が飛び交っていた。
見るものが全て珍しいジョミーは、視線をあちこちに投げ、ブリッジを
歩き回っている。

シュン。
扉の開く音に振り返れば、深い紫のマントを翻して細身の身体が近寄ってくる
所だった。
銀の髪が照明を反射して輝く。
うっとりと見蕩れるジョミーを認めて、ブルーの顔が綻んだ。

「ブルー…っ!」
「やあ、ジョミー。よく似合っているね」

嬉しさを隠そうともしないジョミーの様子に、ブルーの笑みが深くなる。
そのまま会話をすると、ブルーはジョミーにクルーの紹介と併せてブリッジの
説明をした。
一通り案内を済ませ、再び元の場所に戻る。
さて、これからどうしたものかと頭をめぐらせたジョミーは唯独り
挨拶の済んでいなかった艦長に目が留まった。
立ったまま、ゼルと込み入った話をしているようだ。
眉間の皺が深い。
その視線を追って、ブルーもハーレイを見つめた。

「ブルー、ハーレイは忙しそうだから―――」

また後で挨拶するよ。
その言葉をジョミーは飲み込んだ。
ブルーの眼が険しくなっているのに気がついたから。

「…ブルー?」

つかつかと誰もいないキャプテンシートに歩み寄り、低く言った。

「抱っこ」

その傍で立ち話をしていたハーレイとゼルが、振り向く。
じろっと見上げる瞳に、二人はたじろいだ。

「…抱っこ」

繰り返された言葉に「ああ…!」と肩を竦めると、ゼルは自席に戻っていった。
何が起こっているのか分からないジョミーの目の前で、ハーレイは
すとんとキャプテンシートに腰を下ろす。
一つ息を吐くと、言った。

「どうぞ」

両手を広げる。
ブルーは背中を向けるとぴょんとその膝に乗った。

硬直したジョミーに、近付いて来たブラウが耳打ちする。
あれがソルジャーシートだ、と。

ハーレイは横を向き、手で持った書類に眼を通している。
その膝の上で、ブルーは運んできた貰った紅茶を飲んでいる。

「ソ…ソルジャーシート?!」

二人の寛いだ様子に、ジョミーは眩暈がした。
おかしいだろう?!
そう思うのに、誰も気にする者もいない。
教えてくれたブラウにそれを訴えるが、一笑に付された。

「もうみんな慣れっこさ。一々気にする奴なんていないよ。それにさ―――」

ちょっと良いじゃないか。
可愛らしいだろ?
あの二人…。

いずれ、あんたも"ああ"だ、と顎をしゃくられ、ジョミーは必死で顔を振る。

「じゃあ、どうするんだい?このブリッジにソルジャーの席は無いんだよ?」
「―――?!」

改めて見回して、それが事実だと知る。
自分は絶対に立っていよう、何があっても…!
そう心に決めた、ジョミーだった。













---------------------------------------------------- 20080224 時々動いたりするから あまり座り心地はよくないけれど でも 大きくて 暖かくて いい匂いのする 僕だけの場所