寒い…。

ガラスから手を離したブルーが呟いた。
顔を上げたハーレイの吐く息も白い。
消灯時間も過ぎて大分経つ。
省電力モードに切り変わり、空調も必要最低限に制御されているから、
通路や食堂など人気の無い場所は外気に近い温度まで下がっていた。

この展望室もそうだ。

執務時間が終わった途端「少し歩かないか」と誘われて。
ブルーに付き合いシャングリラ内を巡視し、この展望室に
辿り着いたのだった。

「お部屋に戻りましょうか?」
「…いや」

動こうとしないブルーだが、その淡い桃色の唇が再び「寒い」と
動いた。

「やはり、戻りましょう」

ハーレイは促すように肩に手を置いた。
しかし、細い身体はガラスから離れるそぶりを見せない。

「寒い…よ、ハーレイ…」

置いた褐色の手に白く華奢なブルーのそれが重なった。
信じられない位冷たい。
戻りましょう!と強く掴んだ手を、きゅっと握られた。
落とした視線の先で、微かに震える指先。
そのすぐ近く、赤く染まった頬や耳朶、うなじが目に映る。

ハーレイはやっと気がついた。
後ろからギュッと抱き締めれば、腕の中のブルーの心臓が物凄い
速さで脈打っていた。

「…まだ、寒いですか…」
「―――うん」
「では部屋に…」
「いやだ。ここがいい」
「ですが―――」

ハーレイは躊躇した。
いくら人気が無いとはいえ、自室ではないのだ。誰が来るかも
分からない上に、溢れてしまう声や思念を遮蔽するシステムも無い。

「大丈夫、僕が"覆う"から…」

それともハーレイはそんなに激しくするつもり?
揶揄を含んだ"声"に、身体が反応した。
目の前のうなじを、きつく吸い上げる。

はぁ…っ!
押し殺した声と共にブルーがびくっと震え、ガラスに手を付く。
ハーレイは少しづつ唇の位置をずらしながら、右手を下衣の中に
忍ばせた。
既に固くなっているブルー自身を握り込み、扱き上げる。
二、三度擦っただけで、それは水音を立て始めた。

「―――んっ!…ぁ…ぅ…んん…っ!…」

ハーレイは下履きごとずり下げ、勃ち上がったブルーと臀部だけを
露出させた。
左手で忙しげに猛った己のものを取り出す。
一旦右手を抜き取り、先走りにぬめる指で蠢くブルーの後孔を解した。

「ぁ…う…んあ…はぁ……あ…―――ああああああっ!!」

両手で細い腰を掴み、一気に貫く。
躊躇いもなく、いきなり激しく突き上げた。
ブルーの押し殺すことの出来ない艶やかな声が、噛み締めた唇を割って
零れ出す。

「ん…ふっ!…ぁは…あ…!…ぃ…っ…うあ…っ!」

己の原始的な欲望のままに腰を揺らす。
それは突き入れているハーレイだけでなく、飲み込まされているブルーも
同じだった。
淫らに、誘うように揺れる。
良いところに当たったのか、切なげな声を上げて背をくねらせた。

ガラスに付いた両手を縁取るように白い影が現れる。
ブルーの熱くなった身体から発せられた水分か。
ハーレイが腰を穿つたびに、それは位置をずらしていく。

そのガラスの向こうは、月のない暗い夜だった。
青白い非常灯を反射するブルーの白い顔が映っている。
目を細め、空気を求めて喘ぐように唇を薄く開いていた。
苦しげだか、決してそれだけではないと解る、匂い立つような欲情を
乗せた表情だ。

………堪らない。
ハーレイは必死で腰を振った。

手の位置のずれが次第に大きくなり、動く速さも上がる。
ブルーの喘ぎ声は押し殺せないものの方が増え、音程も上がっていた。

汗を滴らせたハーレイはハンカチを取り出すと、はち切れそうなブルー自身を
そっと包む。
加減無くガクガクと腰を揺さぶり、ブルーの一番感じる内壁を突いた。

「ひっ―――!ぁああああああ…っ!!」

ブルーは柔らかい布の中に、白濁を吐き出す。
きつい締め付けを味わうと、ハーレイは自身を引き抜きブルーと同じように
ハンカチの中に吐精した。

膝の力が抜けたのか、ブルーはハーレイに背中を預け寄りかかる。
ぐいっと首を廻し後ろを向くと、唇を開いた。
ハーレイのそれが覆い被さる。深く深く口づけた。

長いキスの後、ハーレイが問う。

「もう…寒くないですか…?」
「………うん…」
「では、戻りましょう」
「うん……でも、きっと僕の部屋はまだ、寒いよ…」
「はい」

わかりました。
ハーレイはそっと唇を重ねる。

暖かくしましょう。
その言葉だけを残して、二人は消えたのだった。








--------------------------------- 20090111(日記からサルベージ) 暖めて差し上げます いつでも どこでも あなたが望むなら