【注意】

エロの後に、ちょっぴりグロが来ます。
痛いのが駄目な方は飛ばす事をお勧めします。
この場面を無理に読まなくても、次に進めると思います。



























服を脱いだキースが戻ると、ブルーはシャワーを浴びていた。
顔を上げ瞼を閉じて、軽く開いた唇に温水を伝わせている。

キースは近づいて、細く白い腰に後ろから腕を回し背中から抱き寄せる。
残った左手で掬うように顎を取り、親指で唇を割った。
滑り込ませれば、舌が絡みつく。

「…ん……ふ……」

ぴちゃぴちゃという水音と共に、零れる息。
慣らされた身体がすぐに反応し出す。
立ち上がりつつあるブルー自身を右手で撫でた。

「―――ん…っ!…あ…ぅ……」

シャワーとは明らかに違う、粘り気のある液体が指についた。
それを塗り込めるように、扱く。
同じようにびしょ濡れになりながら、キースはブルーのうなじに吸い付いた。
味わいつつ、長い手を伸ばしてシャワーを止める。

赤い花弁を刻み付けていきながら、這う舌と唇は真っ白い背中に下りる。
口と腰を解放されたブルーが、両手を壁に付き少し足を開いた格好で立つ
その背骨に沿って、舐め下ろした。

「あ……あ……う…ああ…は…っ…あ…」

白い背中が、ふるふると震える。
キースは身体を上下させながら、背中を幾度も往復した。
綺麗なカーブを描く肩甲骨。
うっすらと骨の形を窺わせる、綯った縄のような表情の筋肉は程よく付いている。
引き締まり、少し細すぎるのではと思われるくらい華奢な腰。
窪む脇の下には、銀の茂みはない。
綺麗で本当に美しい少年―――――それがミュウの長、ソルジャーブルーだった。

背中を舐め尽したキースの薄い唇は、滑らかな二つの丘に向かう。
しゃがみ込み、片手で納まってしまうくらい小さな白い丘に口付けていく。
数枚の赤い花弁が散った。

その谷間に息づく、緩やかな収縮を始めた秘所に舌を伸ばした。
薄く朱に色付いたブルーの身体が、跳ねる。
キースは指を使わず、舌だけで解していく。

「…ん…っ…はぁっ…!」

キースが、ついと唇を離した。
途端、生暖かいものが太股を伝う。
スロンの欲望がゆっくりと流れ出る感覚も、快感に変わった。
ブルーは押し殺した声で、喘ぎ続ける。

全て流れ切ってしまうと、キースはブルーの下肢をシャワーでそっと洗い流した。
降り注ぐ温水を止めるため立ち上がり、背中からぴったりと密着して
耳元で囁いた。


「………ブルー……」


その声は静かで優しいものだった。
これから抱こうというのに、熱を全く孕んでいない。
怖ろしいほどの穏やかさに思わず振り返ろうとしたブルーの身体は、活動を再開した
キースの舌に阻止された。
尖った舌先が淵をなぞる。
秘所から這い上がってくる疼きに、壁に留め置かれた。

「う…!…は…あ……はあ……いっ…んぅ……あああ……」

ブルーの蜜が、ぴんと起立した自身から滴って落ちる。
それを認め口角を上げたキースは、立ち上がり己の滾りを勢い良く埋め込んだ。

ブルーの啼き声が、シャワー室に響いた。













― 刻印04 ―















「…い…っ…あああああ…っ!…っは…ぁ……やぁ…ああああ…んーっ!」

放った余韻に浸る間もなく、背後からの手で根元から絞られて軽く達する。
キース自身は一度も精を吐き出していないため、埋め込まれたままだ。
湧き上がる快感に堪え切れす、ブルーは何度も大きな声を出した。

その声は、部屋に戻ったセルジュとスロンの耳にも届いた。
己の中の劣情を煽る喘ぎ声に耳を塞ぐ訳にもいかず、ひたすら堪える。
セルジュはシャワー室を睨みつけ、スロンは俯いていた。

一方ずっと聞かされていたマツカは、顔を青ざめさせて立ち尽くしている。
苛まれているようなブルーの声の所為もあったが、最大の理由は二人が
運んできたものだった。
それは間違いなくキースが指示したものなのだが―――――



こんなものをどうしようというのか。
どうやって使用するつもりなのか。
何に対して使うというのか。



予想は、簡単に立つ。
それ以外使いようがないのだから。
けれど、でも………想像するものおぞましかった。



マツカの顔は、更に色を失っていく。







暫くして、シャワー室で一際高い声が上がり、途絶えた。
水音の後、意識を失ったブルーを抱えてキースが出てきたのは、それからきっかり
5分後の事。
全裸のブルーに対し、ハイネックのアンダーシャツと制服の下衣だけではあったが
キースは身支度を整えていた。

「支度は出来ているか」
「はいっ」

国家騎士団の尉官二人は、敬礼を返す。
マツカは俯いたままだった。

「堪えられないようなら、部屋を出ろ」

抱えていたブルーの足を下ろしながら言う。
マツカは「…いえ」と首を振り、顔を上げた。

異様な熱気が室内を席巻している。
国家騎士団の赤の制服を纏う3人の額に汗が浮かんでいた。

「…スロン、消毒を」

びくっと身体を震わせたスロンだったが、小振りな噴霧器のような器具を手に取り
ブルーに歩み寄っていく。
キースに身体を預け、抱き締められる格好の小さな背中に吹き付けた。

2度、3度。
満遍なく背中を覆うように。
幾筋かの流れが出来、消毒液の雫が滴る。

熱を奪われるひんやりとした感触にブルーの白い睫が震え、今だ赤いままの宝玉が
姿を現した。
襲い掛かってくる熱気と、まだキースの腕の中に居る己の状態に眉を顰める。

「何を…している…?」

至近距離からの視線にキースは、笑い返した。
ぞくっと、背筋を走り抜けたもの。
両肩を押さえつけられてはいたが、ブルーは顔を捩って振り返った。

背後にあったのは、鋼鉄の箱。
ゴオという音が聞こえてきそうな、揺らめかない赤い炎が覗く。

アレは…何だ…

キースを見る
そこにあったのは同じ笑顔。
温かみの全く無い笑顔。

いや。
口角は上がり、目も眉も"笑う"という形を取ってはいるが、これを笑顔と呼ぶのか。

実験動物として扱われた頃ですら、こんな笑みは見たことが無かった。
ブルーを嬲った研究者たちですら、その笑みには理由――蔑み、傷つけ、
己の劣等感を満足させる、あるいは欲望を吐き出すためだけであっても――を
感じ取る事が出来たのに。

こんな表情を何と呼ぶのか、ブルーは知らない。

同時に、ブルーは自身のサイオンが弱っている事に感謝した。
今のキースの内面を覗いてしまったら、自分も狂ってしまうかもしれない。



そう……狂っている。
これが、一番しっくり来るのでないか。



ブルーの背中に走った冷たいものは、今や全身を包み、細い身体を震わせ始めた。

何をされるか解らないが、傍に居てはいけない。
ブルーは逃れようと、暴れる。
しかし、キースの細いながらも力強い腕ががっしりと肩を掴み、その動きを封じた。

「放せっ!」
「殺しはしない。安心しろ」
「何をするつもりだっ」

キースは、笑みを深くした。

「…少し痛い目を」



そして、消えない刻印を。
私のものであるという、証をその身に刻んでもらう。



呆然と自分を見上げるブルーを更にきつく拘束すると顔を上げ、セルジュに言った。

「―――やれ」

セルジュが金属の箱の蓋を開けると、部屋の温度は跳ね上がった。
溶鉱炉とまではいかないが、焼き鏝を熱しているのだ。
尋常な温度ではない。

直径30センチほどの丸い鏝を取り出す。
真っ赤に焼けたその金属は繊細な文様を描いていた。

セルジュは鏝のあまりの熱さに顔を顰めながらも、持ち上げるとふらつくことなく
白い背中に近づいた。

「やめろっ!放せっ!!」

声を上げるのはブルー唯独り。
マツカは真っ青な顔のままキース以下の3人を見つめ、スロンも唇を噛み締めて
立ち尽くす。
背中にじりじりと迫る熱に身を捩るが、逃れる事は出来ない。



視線を上げたセルジュにキースが微笑んだ。



「―――ひっ……ぐっ―――ああああああああああああああああっ!!」

肉の焦げる匂いと共に、ブルーの背中から白い煙が上がった。
身体を反らせ絶叫する。
それでも、この地獄から逃れる事は出来ない。
ガクガクと痙攣するブルーの腕がキースの背中に回り、震える指が爪を食い込ませた。

セルジュが背中から焼き鏝を放すと、ブルーの身体から力が抜ける。
真っ赤な文様が華奢な白い背中一面に写された。
崩れ落ちそうな身体を抱え上げ直し、キースは再度セルジュに命じる。



もう一度、と。



セルジュの顔も強張る。
キースに同じ言葉を繰り返され、何かを振り切るように左右に頭を振った。
文様を確かめ、ずれない様に慎重に押し当てる。

再び絶叫したブルーは、痛みから逃れる為かキースの肩口に噛み付いた。
激痛に身体を痙攣させながらも、放そうとしない。
血を吸ったアンダーシャツが、見る見る色を変えた。

駆けつけたマツカを押しのけたその背後で、「ぐえ…」っという声と
びちゃと何かが零れる音がした。
床に両手両膝を付いたスロンが、胃の内容物を吐瀉していた。

セルジュが焼き鏝を外す。
温度低下のため赤黒く色を変えた金属には、同じ色の付着物が合った。
焼け焦げたブルーの皮膚。
認めた途端、セルジュも口を覆いトイレに駆け込んだ。

「マツカ、後始末はお前だ」

その言葉は、ブルーの手当ての事だと思った。
しかし、マツカの伸ばした手を避けるように、キースは気を失ったブルーを
抱え上げた。

「この部屋はもう使わん。綺麗にしておけ」
「ブルーは―――――自分が医務室へ運びます!」
「必要ない」
「キース……?」

背中に触れないよう腕の位置を調整しながら、既に歩き出している。
追い縋るマツカに、言った。

「私の部屋に連れて行く。治療も、そこで行う」
「キースっ!」
「お前は黙って命令に従っていればいいんだ、マツカ」

静かな声だが、疑問を唱える事も聞き返すことも許さないと告げている。
ただ従えと。



キースの歩いた道に、赤い小さな水たまりが沢山散っていく。
その中に混じって、無色の雫が落ちる。

それはブルーの眦から零れた涙。
激痛に耐え、愛しい者の名を呼んだ時に溢れたもの。

きらっと光って落ちた涙は、キースの足下で踏みにじられたのだった。





























ハーレイは顔を上げた。

シャングリラの展望室。
勤務が終わると必ず寄る場所だった。

独りで静かな時を過ごす。
知っている人数も多くはなかったけれど、知っていてもその時間を邪魔する者も
いない。

いつもと同じように、ゆっくりと時間が流れる。

アルタミラを陥落し、当局との折衝など雑多な仕事が増えた上、テラズNo.5から
引き出した情報も精査識別しなければならない。
忙しい毎日ではあるのだが、それでもハーレイは必ずこの場所を訪れていた。

ここからは見えるのだ。
何故か途切れない、ハーレイの打ち込んだアンカーの細い線が。
真っ直ぐに宇宙に伸びる銀の糸が。
ブルーと自分を最後まで繋いでいた、細い細い糸が。

この先に彼の人が眠るのだろうか。
愛おしいあの姿が。

ハーレイは手のひらの細い銀の光を握り締める。
そうっと、優しく。

心の中で語り掛けている最中に、この糸が震えた気がした。
同時に聞きたくて堪らない声も。



ハーレイ…!



思わず横を見る。
いつもブルーが立っていた位置、自分の左隣。

そこには、誰もいない。
目に映るのは暗闇ばかりで。
ハーレイは視線を空に戻した。



不意に。
その眦から、涙が零れた。



理由の分からない涙にハーレイは困惑する。
指先で拭っても、後から後から溢れてくる。

ため息を一つついて、拭うのを止めた。
涙流れるままに、夜空を見上げる。

「………ブルー…」

ハーレイは思いの丈を込めて、その名を呼んだ。





























----------------------------------- ほしいもの 欲しい者 唯一つ望む事 20070822