rebirth




ザフトの訓練兵たちがメサイア陥落を聞いたのは就寝時間を過ぎてからだった。

こんな時に就寝時間厳守もないだろうとは全員の一致したで見解あったが、"あの舎監"に逆らおうという勇気ある者も出ないだろうという予想でも一致していた。

果たして結果は予想通りで、訓練生たちはそれぞれの自室であらゆるメディアを駆使した情報収集のみで一夜を過ごしたのだった。





デビット・ホークは些か目覚めが悪かったらしい。

隣室のリール・デュナンの金髪がドアから覗く事3度目に、漸くベッドから降りたのだった。

ぼんやりとした様子でバスルームに向かう。その足取りも覚束ない。


「放送聞いてたろ、デービッド?早くしないと間に合わないよ!」


バスルームから返事はない。じれてリールが叫ぶ。


「デービッド寝呆けてる場合じゃないだろ!メサイアが落ちて、みんな一睡もしてないのに、寝てたのは君らしいけど」


「・・・先に行ってくれ」


クラスのムードメーカーである彼らしからぬ、その声の張りの無さに驚いたリールはバスルームを覗き込んだ。

洗面台に両手を付き、深く項垂れている。具合が悪いのではと言うリールに、声を絞り出すように返事をした。


「何でもない。少し一人にしてくれないか」


「・・・デービッド」


「頼むよ」


そう言ったデビッドは、リールを見て弱々しく微笑む。初めて見る表情にリールは息を呑んだ。








金髪の小柄な少年が部屋を出たのを確認すると、"ギルバート・デュランダル"は意を決して顔を上げた。

洗面台の上にある鏡に映った顔を見据える。


「これは一体・・・どうしたというんだ・・・」


不本意ながら声が、身体が震える。

鏡に映っているのは瞳の色こそ変わらないが、初めて見る少年の顔。短い黒髪に幼さの抜けきらない顔。その顔は青ざめている。

ゆっくりと頬に、鼻に触れた。震えが止まらない指の感覚が間違いなく己の顔であると告げる。


「私は・・・私はメサイアで・・・・・レイに撃たれて・・・タリアと・・・・・!!」

慌ててバスルームを飛び出した。

全く見覚えのない部屋を見渡す。ベットと机と小さなロッカーが一つ。必要最小限の物しかない狭い部屋だ。





ココはどこだ?



頭が混乱している。何がどうなっているのか。



部屋の中を泳ぎ回る視線が、デスクトップのPCを捉えた。

震える指を必死に動かして、キーボードを打つ。

兎に角、情報だ。情報を集めなければ・・・!




(2006/1/23)






続く






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