独房と懲罰。
ただし、それは、それは、ささやかな―――――










背中から抱き込まれて。
青の間に二人きりという状況。
いつもと同じ温もりに身体を預けた。
心地好さに頬が緩む。

ハーレイの大きな手が頬に触れ、親指が唇をなぞった。
薄く開いたそこに入り込んだ指は舌先だけに触れ、すぐに下方へと移動してしまう。
寂しくなった唇を満たそうと振り返ろうとしたが、首筋に顔を埋めるハーレイに
阻まれて。
何度か試みるけれど、くすんだ金髪は頑として動かない。
そうこうしているうちに、太いけれど僕の身体を愛撫することに長けた指先たちが
アンダーをめくり上げ胸を弄り出した。
全体を優しく撫ぜ、左胸中央のまだ小さな尖りを摘む。
親指と中指ではさみ、人差し指で先を擦った。
甘い電流が走る。
何度も何度も擦られて、蓄積される熱と疼きに腰を動かさずにはいられない。
すると左手がはしたないと僕を嗜めるかのように太腿から脚の間をゆっくりと撫で始めた。
たまらない。
身体をくねらせ耐えるが、とうとう声も抑えられなくなってしまって。
ベッドに連れて行ってと強請った。

いつもなら、すぐにふわりとした浮遊感がやってくるのに。
抱き上げられて、ゆっくりと運ばれ柔らかいベッドにそうっと降ろされて。
熱い唇と共にあの暖かくて幸せな時が訪れる―――――。

だが、今日はいつもと違った。
「ハーレイ」と呼びかけても、返事がない。
僕を抱き締める腕の力が強くなり、指の動きも激しさを増す。
もう一度心の中で声をかけてみたが、こちらにも応えはなかった。

それどころかサイオンから伝わってくるのは、静かだけれど確かな…怒り。

アレか…。
思わずクスっと笑ってしまった。
心当たりがあったから。
一応「どうした?」と問うてみた。
やっぱり返事がない。
ま、そうだろうな。

ハーレイの腕に更に力が篭る。
ぎゅっと強く抱き締められると、耳元で低く囁く声。


―――――艦長の命令をどうお考えなのです。
確かにあなたは長だ。
だが、ことこのシャングリラに関しては私の命令に従っていただくという
お約束でしたでしょうに。


「あれ以上近づかれたらマズかったろう?出ていたのは僕ひとりだったんだから、
うまく遠ざけられたし」
大丈夫だよ、と続けようとしたが、言い終える前に否定された。


―――――いいえ。
こちらで対処可能でした。
ワープは間に合う、発見される前に飛べる、そう何度も申し上げた。
あなたがわざわざ発見され、囮になる必要など無かったのです。


「でも」と反論を試みたけれど、今度は口を開く間も無かった。


―――――駄目です。
口答えは許しません。
艦長の命令は絶対だ。
二人で、私とあなたでそう決めた。


少しの沈黙の後、痛いほど強く抱き込まれる。
痛いと声を上げても腕の力は弱まらなかった。


―――――そうだろう。
二人で、決めたんだ。
ソルジャーと館長ではない、二人で。
約束だったのに、俺の命令には従ってもらうと。
なのに、あんな危険な方法…!
許さない。
絶対に。


更に強い力で抱き締められて。
捉えられたまま抵抗も出来ない僕の耳元で、ハーレイは低く言った。


―――――あなたに懲罰を。










淡い青色に満たされた部屋の真ん中で、小さなテーブルに掴まり立つ。
背中にはぴったりと大きなハーレイの身体。
抱き込まれた僕は、ささやかな独房に囚われていた。

アンダーはすっかりめくり上げられ、尖った胸が顕になっている。
もちろん寒いことなどない。
大きな身体にすっぽりと包込まれているのだから。

ハーレイの指はまだ上半身をうろついていた。
赤い両の乳首を摘んだり、押し込んでみたり。
左のうなじには暖かくて柔らかいものが蠢いていた。
舐めたり、吸ったりしながら、僕の肌に印を刻んでいく。
その度に肌がわななく。

「ハーレイ…」

もうすっかり大きくなっている僕に触れて欲しくて、逞しい腕を掴んだ。
けれど、それは応えてくれなくて。
僕は自分で手を伸ばした。
それを一回りも大きな褐色の手が捕らえると、自分の口元に運ぶ。

カリっ。
噛まれた。

「これが懲罰…?」
「……………」

呆れるほどの甘噛みに、思わず笑ってしまった。
そんなんじゃ足りないよ、罰にならないと言えば、肩先にさっきより
ほんの少しだけ強く歯を立てる。
全然痛くなんてないのに、ハーレイはそこをそうっと舐め出した。
身体が、疼く。

「ん…ん…ぅっ」

柔らかい舌でぴちゃ、ぴちゃとなぞられ、熱が上がる。
前だけじゃなく後ろもわななき出して、堪え切れない僕は後ろを向きながら
ハーレイの金糸を掴んだ。
顔を上げさせ、開いたままの唇を貪る。
舌を差し入れて、ハーレイのそれに絡ませた。

「ふ、んむ…う…ぅ…ん…」

今だ乳首を弄っていた右手を股間に押し下げる。
すると大きな手はズボンをずらし、僕を握りしめた。
ほぼ同時に左手が後ろに回り、尻の谷間に沿って下りつつ、太腿まで
ズボンを下げてしまう。

「はあ…っ…!」

溢れる先走りを塗り込めるように先端をぐちぐちと扱かれて、いきなりの
強い快感に握りしめていた金髪から手が離れ、テーブルにしがみついた。
そうしていないと、立っているのも覚束ない。
うつむいた視界に、僕の事を知り尽くした指先たちが蠢く。
淫らに光る僕を撫ぜ、絡みつき、強く弱く扱き上げるのだ。
そのあまりの淫靡さに、目眩がする。

「あっ、あ…ああ…、ん、ダメっ…!」

すぐに弾けそうになり、僕は腰を引いた。
でもそれは、いつのまにやらヌメるものを纏ったハーレイの左手に自らを
差し出す格好になる。

「力を抜いて、ブルー…」
「んっ…!」

ヒクついているだろう場所に、太い指はすっと入り込んだ。
ハーレイは僕の呼吸に合わせてゆっくりと押し込み、引き抜きながら解していく。
やわやわと前も扱かれて、関節の形が分かるほど指を締め付けてしまう。

「あ…あ…!うあ…ぅん…っ」
「もうイきそうだ、ブルー」

前も後ろもこんなにして。
耳朶に唇が触れたまま、ハーレイが囁いた。
その熱い息と言葉に煽られる。

「も、入れて…!」
「…ああ」

少しでも早く入れて欲しくて、腰を突き出した。
双丘を強く掴まれ、広げられる。
固くて熱い切先が指が抜けた箇所にピタリと押し当てられた。
馴染んだハーレイのもの。
すぐに入り込んで来たそれは、いつものように僕の中でドクドクと脈打つ。

「あぁぁぁっ!あっ、ああっ…!」

激しく穿たれ、快感が脊髄を走りぬけ脳を焼く。
僕は大きく頭を振り、高く声を上げた。

ガタガタとテーブルの揺れる音に、ハーレイの荒い息遣いと肌のぶつかる音。
それに水音と僕の喘ぐ声が重なる。
快感に呑まれ、白く霞み始めていた頭の中でこんなことを思っていた。



こんな独房ならずっと囚われていてもいい。
この懲罰ならいつでも受けよう。

もっとも。
こんな事を口にしたら君は怒るだろうけれど。












---------------------------------------------------- 20120505 君はいつでも暖かい。 どんなときも。