初めて目が合ったときの事を憶えている。 水槽から取り出されて、検査用のベッドに寝かされたおまえ。 ゆっくりと周りを見回す。 だが黒い瞳は焦点を結んでいない。 隔壁ガラスに手を付き検査室を覗き込んでいた俺を おまえは見た。 まだ培養水に濡れた唇が動く。 何と言った? 俺には聞き取ることが出来なかった。
―― my better sweet 04 ―― 冷たいものが口に注がれ、咽喉を滑り降りる。 抵抗なく嚥下した。 酷く咽喉が渇いていたし、口の中に残る男の精の匂いや粘つきが気持ち悪かったから。 柔らかいものに唇を覆われ、すぐに入ってくるのは冷たい水。 ジョミーは咽喉を鳴らして、何度もそれを受け入れる。 咽喉の渇きが治まると、今度は鼻の奥が針ででも刺されたかのように、つんとした。 刺激臭が鼻の中に満ちている。 それによる意識の覚醒と共に、身体の痛みも蘇ってきた。 押さえ付けられ続けた手首も足首も、無理やり開かれた関節も痛い。 そして数え切れないほど陵辱された部分は、熱を持ち爛れている。 全身が痛みを訴えていた。 だが、何より痛いのは―――心。 悔しさと悲しみが溢れ出る。 堪えきれないそれらは目から零れ、すっとした鼻梁を伝い、床に落ちた。 「何を泣く?」 ジョミーは頭を上げた。 身体の痛みに顔が歪む。 自分とブルーをこんな目に合わせた張本人が、そこにいた。 膝を付き、覗き込んでいる。 ジョミーの鼻先から離したものを、控えていた衛士に渡しながら囁いた。 「身体の痛みは我慢しろ。この馬鹿騒ぎが終わったら治療してやる」 …殺して…やる…! ジョミーの言葉を紡ぐことの出来ない唇が動く。 「元気の良いことだ―――結構!」 エドワードは金糸を掴み、ジョミーの顔をその方に向けた。 二人の男の間で、ブルーが揺れている。 細い身体をくねらせ、前の男に縋りつく格好で、喘いでいた。 「―――?!」 「いい声だ」 「――う!――ぅう!!」」 「表情もいい。男を誘うのに慣れた顔だ」 男娼の顔だ。 ブルーを卑下し貶める言葉にも、ジョミーは反応しなかった。 出来なかった―――ブルーに目を奪われていた。 「…あ……う…ひぁ…ぅう…ああ…」 銀糸が跳ねる。 仰け反った背中のラインが、美しくて―――卑猥だった。 前後の男たちなど目に入らない。 太い指でブルーのあちこちを弄り、啼かせている。 銀の茂みから覗く、液塗れの部分が厚い掌に包まれると、ブルーは頭を激しく振った。 「んぁああああっ…!んふ…ぅん……ん…」 後頭部を押さえて顔を寄せられると、迷わず口を開く。 男の舌を受け入れ、くぐもった声を上げた。 自ら太い首に手を廻し、顔を傾ける。 より深く口づけするために。 絡め合う舌や唇が立てる音が耳に届きそうなほど、ジョミーはブルーを見つめていた。 ジョミーの身体に表れた変化を、エドワードは見逃さなかった。 水と一緒に流し込んだ薬が効いてくるには、まだ早い。 ―――そうだったのか…。 手間が省けた。 にやりと笑うと、身体を曲げジョミーに耳打ちした。 「"恋人"のあんな姿に欲情するのか、おまえは」 「―ー―っ?!」 「おまえを守ろうとして健気にも身体を張ってるってのに、ここをおっ勃てて―――」 すっかり勃ち上がり、先端に蜜の玉すら作っているジョミー自身を掴んだ。 上下に軽く扱いただけで、華奢な腰が震え出す。 間違いない。 エドワードはジョミーの両手首を掴むと、立ち上がった。 意図を悟り暴れるジョミーを両手で難なく吊るし、身体の正面を晒す。 「皆さん、ご覧下さい」 さして大きい声でもないのに、元老たちはエドワードを見た。 正確にはジョミーのほっそりとした身体を。 おお。 ほう。 立派なものだ。 波のように押し寄せる揶揄の声に、ジョミーは顔を背ける。 嗤う顔の並ぶ正面も、勃起した自身を見るのも嫌だったから。 何より―――ブルーの顔を見ることが出来なかったから。 一方、自分を嬲っていた元老たちの視線を追い、ジョミーに辿り着いたブルーは動けなかった。 すっかり意識を失っていたと思っていたから…。 己の痴態を見られた―――その事がブルーを縛る。 硬直したブルーを見て、エドワードの笑みが深くなる。 こちらも、か…。 両思いで…。 晩熟なことだ。 「どうも経験がないようです。この哀れな少年に、初体験をさせてやって下さいませんか?」 その―――思い人の身体で。 エドワードのグレーの瞳の真ん中に捉えられた、ブルーがびくっと震えた。 「ほう、そうなのかね?!」 「これは、これは…!」 「可哀想に…!!」 椅子に座っていた元老たちがわらわらとジョミーの周りに集まってくる。 その全ての顔が、邪悪に笑っていた。 吊り下げられ逃げることの出来ない身体を、弄ぶ。 萎えることなく涙を零す茎を弾き、乳首に触れる。 逃れようと捩るわき腹を撫でた。 「ぅ…っ!ぁあ…あ…う…っ!!」 ジョミーは涙を流し、暴れる。 手首を掴んでいたエドワードは、その体温が少し上がったことに気がついた。 うなじや耳が赤く染まりつつある。 薬が効き始めたのだ。 ジョミーは、自分の身体の変化に戸惑っていた。 あれほど嫌だった男たちの手が触れるたびに、肌に電流が走る。 それは紛れも無い快感で。 萎えない自身がそれを証明していた。 エドワードから衛士に身体を渡されても、手が服が擦れるその刺激すら甘い。 ジョミーは暴れながら、喘いだ。 吊り下げられたままブルーの傍まで運ばれる。 ブルーもまた、衛士に抱えられていた。 器具で後ろ手に拘束され、椅子に座った屈強な男に膝裏を掴まれている。 身を捩り、声を上げて逆らっているが、抱えた男は微動だにしない。 晒された秘部は裂けているのか血に塗れ、腫れあがっていた。 そんな、ブルーの酷い状態を見せられても、ジョミーの茎は勢いを保ったまま。 それどころか、息は荒くなり、身体が熱かった。 「初体験なんだから、受け方がこれじゃあ興ざめだ」 後から手を伸ばした元老が、ブルーの萎んだものを扱き出す。 しかし、幾ら擦ってもそれは勃ち上がることは無かった。 「ああっ!うわあっ!!」 ブルーは暴れ喚くのを止めない。 全身で、行われようとしていることを拒んでいた。 傍にやってきたエドワードを見るなり、その顔に唾を吐きかける。 赤く色を変えた瞳が、炎を噴き上げていた。 そのあまりの様子に元老の一人が渋面を向ける。 「これでは感激の場面にはならんのではないか、エドワード?」 「……そうですね―――こいつのレベルを戻せ」 一言も発することなく後ろに控えている、影のような衛士に命じた。 首に巻かれたサイオン抑制装置の細い銀の輪が光ると、ブルーの全身から力が抜けていく。 背後の衛士の厚い胸に身体を預けるが、それでもまだ首を横に振り、拒否を示していた。 「…ぅ………ぅぅ…」 「じゃあ、始めましょうか」 ブルーの身体が、ぐいと更に開かれる。 傷ついた部分を差し出すように、抱え直された。 その足の間に、ジョミーを下げた男が入り込む。 「2輪挿しの後だからな、少し緩いかもしれないが…童貞のお前には丁度良いだろう」 別の衛士が位置を調整し、動かないように腰を押さえた。 その腰が前に突き出される。 「うわああああっ…!」 ジョミーは、ブルーの中に入った。 温かくてぬめる感触がジョミーを包む。 身体の中心から生まれた快感は、全身を駆け巡った。 首の後ろ毛が逆立ち、目の前が真っ白になる。 細胞の一つ一つが震えているような感覚すら憶えた。 全身で受け止めきれずに、ジョミーは白濁を溢れさせる。 溢れた欲は、ブルーのはらわたを濡らした。 ジョミーは生まれて初めて、人の胎内に吐精したのだった。 その後、3度射精させられた。 ブルーが気を失うと、ジョミーは床に転がされた。 エドワードに流し込まれた薬の所為で、熱が治まらない。 苦しくて苦しくて、逃れたくて手が自身に伸びた。 元老たちに覗き込まれながら、ジョミーは手淫に耽った。 ぼろぼろ涙が零れたけれど、止められなかった。 見ないで、見ないで。 そう言いたかったけれど、言葉が出ない。 首を振り、獣のような声を上げる事しか出来なかった。 更に3度、達した。 3度目には少量の透明な液体しか溢れなかった。 そこでジョミーの意識は途切れる。 耳には、元老たちの笑い声が響いていた。 続く
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