目覚める瞬間に立ち会った。 液体が抜かれていく水槽の中で、もがくお前。 激しく咳き込み、顔を歪ませる。 生まれて初めて空気を肺に入れるのが あんなに苦しいなんて。 自分の時のことを思い出し、俺はこぶしを握る。 思わず呟いた言葉があった。 何と言ったのか―――もう記憶に無いけれど。
―― my better sweet 03 ―― 仕度を終えた衛士が壁際に下がっていく。 席に戻った元老たちの息も荒くなっていた。 早く。 早く見せろ。 サイオンが使えなくても、そんな言葉が聞こえてきそうな視線で 立ち尽くすブルーを見る。 「さあ、王子様。ステージにどうぞ」 エドワードの言葉は、愉しそうに笑っていた。 華奢な磔台が銀色に光る。 ブルーは一歩踏み出すが、傍に近寄ることが出来なかった。 1メートル程手前で立ち止まってしまう。 その小さな背中をエドワードが突き飛ばした。 磔台の下に立つ衛士が腕を伸ばし、白い身体を抱き止める。 ブルーは厚い胸板を押し、顔を背けた。 手や足を振り回し暴れる。 「いいのかな…?」 そういう声愉しげで。 愉快そうな言葉の真の意味を認識するにつれ、ブルーは大人しくなった。 最期に、自分よりも頭一つ以上高い衛士の胸の辺りを掴んでいた手を放す。 力を失った細い手は、男の身体を滑り落ちた。 男は、だらりと下げられた両手を黒い皮の拘束具で一つに括ると高く掲げ、 フックに下げた。 少年の身体が晒される。 薄くしか筋肉の付いていない浮き出たあばらも、細い腰も、折れそうな足も。 ブルーの全てが、白く美しい。 元老たちは息を呑んだ。 男は黙々と作業を続ける。 右の太股、膝裏近くに手首を戒めたものと同じ黒い皮を巻きつけた。 拘束具に付いた銀の小さい輪に、細い鎖を通し手を吊ったフックに掛ける。 そして、引いた。 ぐいと太股が引き上げられ、片足立ちになる。 バランスを崩すことなく、ブルーは身体の隅々を晒した。 しかし―――。 「見えんな」 「ああ、これでは一番肝心な場所が見えない」 元老の声が吊られたブルーの身体を打つ。 細い身体が震えたのは、羞恥か怒りか。 「大丈夫ですよ」 エドワードはブルーを吊った男に、顎をしゃくった。 音も無く背後に回り、自分が吊った小さい身体を抱え上げる。 ブルーは残された左太股下に手を回され意図を悟ると、逃れるように身じろぎした。 しかし、無常にも身体を開かれる。 両足をM字に曲げられ、その中心を晒された。 渇いた液体がこびりついた自身も、その奥の腫れて鬱血し、少し口を開いた秘孔も。 覗き込む元老たちから、ブルーは顔を逸らした。 「やれ」 低い一言に壁際から別の衛士がするすると近寄ってきて、床に置かれた ガラスの器具を手にする。 湯気を立てる透明な液体に先端を浸け、吸い上げた。 半分ほど満たされた注射器を手にしたまま、抱えられたブルーの両足の下に 空の白い容器を置く。 そうして、躊躇うことなく痛々しげな秘所に巨大な器具の先端を突き立てた。 「―――っ!く…っ…!」 あまり裂けていないとはいえ、散々陵辱された部分だ。 内部にも傷があり、沁みる。 歪むブルーの顔に、またしても笑い声が起こった。 液体を全て注ぎ込むと、ちゅぷんと音を立てて注射器が抜かれる。 大した量ではない上に、入れられたのは少々香りがつけられた唯の湯である。 排泄感をもよおす事は無い。 「さあ……どうぞ」 自分で息め。 エドワードが嗤う。 ブルーはちらっと正面を見た。 食い入るように視線を向ける元老たち。 その傍らに立つにこやかに笑う長身の男と目が合った。 男は微笑んだまま、目配せした。 ―――出せ。 ブルーはきつく目を閉じ、唇を噛んだ。 頬が赤く染まる。 「…んっ…!」 窄まりが蠢いた。 一度へこんだかと思うと―――口を開いた。 白い色をした液体が溢れ出す。 それは綺麗な放物線を描いて、空の容器に吸い込まれた。 水音は、何度も、何度も部屋に響いたのだった。 フックから下ろされたブルーは呆然とした表情で、 床に手足を付いて這いつくばっていた。 擬似とはいえ、排泄行為を人前で行ったのだ。 耐えられなかった。 しかし、休むことは許されない。 腕を掴まれ持ち上げられる。 ふらつく足で何とか立ち上がると、放り投げられるように一人の元老の許へと 押し出された。 足が縺れ倒れそうになり、弛んだ太股に縋りつく。 膝を付いた為突き出した格好になった尻に、いきなり突き入れられた。 「ああっ!」 激痛に声を上げる。 綺麗に洗浄された上、潤滑の液体も施されないまま無理やり太いものを 咥えさせられた部分が酷く痛んだ。 左右に激しく振る頭を、縋りついた男に掴まれる。 ぐいと上向かされた。 涙を流した白い顔に満足げに微笑むと、猛った自身に押し付ける。 ブルーはもう一度男のものを口にした。 しなった背中にたらりと生暖かいものが感じられた。 周囲に甘い花の香りが漂う。 そのぬるりとした液体を、何本もの手がブルーの身体に塗り広げる。 背中から首、腹や無毛のわきの下、乳首、細い足や腕。 力なく下がったささやかな茎にも、液体を纏った手が這う。 未だ痛みを訴える結合部にも指が塗りこんだ。 次第に身体が熱くなり、頭がぼうっとしてくる。 痛みは消えた。 それはこの液体が潤滑油の役割を果たした所為もあるが、それだけではなかった。 1人の元老が、口元に笑みを湛えたままブルーと群がる男たちを見下ろすエドワードに 話しかけた。 「随分と子供騙しの媚薬を使うんだな」 「高度な薬遊びをされるあなた方でしたらこんなものでは物足りないのでしょう。  しかし、このミュウには薬に対する耐性が全くありません。この程度でも十分  効果がありますよ」 御覧なさい。 ブルーの腰が揺れていた。 鼻から抜ける声にも艶が乗り始めている。 「他愛無いものだな」 「ええ。子供騙しではありますが、この薬は肌から吸収されゆっくり効く分と、  蒸発し鼻から吸い込まれて速攻で効果を発揮させる分と両方ありますから、  かなり"良いもの"でもあるのですよ」 「お陰で他の者たちの鼻息も荒くなっておるわ!」 「慣れていらっしゃる方々ですから、問題は無いでしょう」 「まあの…」 そういう元老の呼吸も浅く早い。 早く戻られてはいかがですか、と促せばそそくさと"群れ"に帰っていった。 エドワードは鼻で笑った。 前と後ろの両方が爆ぜると、今度は別の男がブルーを抱え上げた。 大きく太股を割り、背面座位の格好で貫く。 白い細い身体が踊った。 「ああっ、あは…んぅ…あ…っ!」 二人の足の間に立ち、すっかり天を向いたブルー自身に己のものを添えて扱く者。 縋るものを求めて宙に浮いた細い手を掴み、やはり勃起した自分に導く者が両側に 1人づつ。 エドワードからは喘ぐブルーの姿は見えなくなった。 「うああ…ひ……ぃ…、んあ…っ」 だが響く嬌声が、ブルーの状態を伝えてくる。 それは途切れることが無かった。 ブルーが床に下ろされる。 顔も身体も、誰のものか判別のつかないほど白濁を浴びていた。 秘孔からも筋となって白いものが零れ落ちている。 また別の男が後ろに膝立ちになり、ブルーに腰を掲げさせた。 双丘を割り中のものを指で掻き出すと、自身を数回扱き侵入させる。 床に頬を押し当てて、尻だけを突き出した格好でブルーは抱かれた。 その目の前を、1人の男の足が動いていく。 足の先にあるものに気づき、 ブルーは思わず掴んだ。 何だ、と見下ろしたのは最初にブルーを後ろから犯した男だった。 ジョミーに執拗なまでの執着を見せていた男……。 ブルーは目を合わせたまま、笑って見せた。 掴んだ手は放さずに、残った腕を後ろに回す。 ぐちゃぐちゃと淫らしい音を立てる結合部に指を這わせてみせる。 そのまま形を確かめるかのようにぐるりと一周させると、突き入れた。 形の良い眉を寄せるが、ブルーは目を逸らさない。 男のものを咥え込んでいる場所に、更に足した己の指を出し入れする。 立ち尽くした男の視線がその場所に釘付けになっているのを確認して、 喘いだ。 聞こえるように。 誘うように。 ―――行かさないために。 ―――守るために。 「くぁああああ…あ…ぁ……」 前後を太った身体に挟まれ、その間でブルーは揺れていた。 咥えこんだ2本の棒が別々に出し入れされる。 感じているものが痛みか快楽か、それすらも判別出来ないほど疲れ切っていた。 身体の求めるまま声をあげ、目の前の男に縋りつきながらも、 周囲に視線を走らせる。 3、4、5、6、7……。 全員いる。 自分の周りに全員いる。 良かった…。 嬌声の合間に、安堵の息を漏らす。 後ろから伸びた手が胸の突起を摘んで押し潰した。 敏感に跳ねる身体に、某か揶揄されたがはっきりとは聞こえない。 もう身体は限界を超えていたが、それは元老たちも同じこと。 大部分の者はだらしなく椅子に座り、グラスを傾けたりしている。 今自分を嬲っているものが終われば、もう……。 力ない声を上げながら、ブルーは安堵していた。 「最期の仕上げと行きますか…」 そんなブルーを見つめながら、エドワードが呟く。 踵を返して、床に横たわったままのジョミーに近づいた。 続く
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