04






ブリッジで、ブルーの視線を辿る。
その先には柔らかそうな猫っ毛の金糸が輝いていた。

また、あなたは……

チリっ。
胸の奥が焦げる。
その苦いものを飲み込んで、私は口を開いた。

「ソルジャー、本日の予定ですが―――」

うん、と返事をして振り返った彼はいつもの彼で。
強い意志と穏やかな心を同居させた顔には、今にも消え入りそうな儚さが漂っている。
先程は焦げてひりついた痛みを伝えた箇所が、今度は刺されたように感じた。

後継者を見出したからなのか、それとも身体が弱ったからなのか…。

その二つには全く関連性が無い事など分かっているけれど、あまりのタイミングに
考えずに入られない。
自分の居なくなった後に、ミュウを守り導くものを探し求めてきたブルーにとって、
彼がたった一つの光である事には間違いない。
その光を目で追ってしまうこと―――それが致し方ないことも分かっていた。

けれど、自分は気がついてしまう。

いつも見つめているから。
感じているから、考えているから。
ブルーのように―――愛しい人を。

眩しそうに見つめる紫の瞳の内に秘められた、狂おしいばかりの想いに
気がついてしまうのだ。
決して、気がつきたい訳など無いのに。

そして、解ってしまう。
ブルーを見つめるジョミーのことも…。











じりじりと遠火で身体を焼かれるような一日が過ぎて。
服も脱がずに、泥で組成されたかのような重い身体をベッドに横たえた。

天井を見る。
いつもと、この300年という長い年月変わらない筈なのに、今日は酷く暗い。
それもこれも全て……。

3時のお茶を青の間で取るとブリッジを出て行ったきり、戻らなかった二人。
あらぬ妄想が浮かんでは消える。
誰よりもジョミーを大事に想うブルーのこと、彼を押し倒すような真似などすまい。
自分から誘う事など、絶対に在りえない。
仮に、ジョミーが迫ったとしても受け入れることも無い。
だから、自分の頭に広がる映像が妄想に過ぎないのは理解しているのだ。

けれど―――。
絡み合う二人の姿が、否定しても否定して浮かんでくる。
いっそ強い酒でも呷って眠ってしまおうかと考えていた私の脳内に、
入室の許可を求める声が響いた。

『いいだろうか、ハーレイ…』

今一番聞きたくない声で、逢いたくない人物からのもの。
しかし、拒む術は無い。
私は扉を開けた。

入ってきたブルーは服装の乱れもなく、マントも外していなかった。
3時にブリッジを出た時のまま。
やはり何事も無かったのだと、私は心の奥底で胸を撫で下ろす。

「疲れているところ、すまない」
「いえ。どうかされましたか?」
「……ああ…いや…」

言い澱むブルーが、ついと顔を逸らした。
その横顔を見ずとも分かっていた。

吐く息が短い。
うなじが微かに朱を纏っている。
身体の熱を持余しているのだ。
私を呼ぶ時間すら、待てない程に。

「どうしたんですか、ブルー…」

私は細いうなじに触れながら、華奢な肩に手を置いた。
ブルーがびくっと身体を震わせる。



何があったんですか。
ジョミーに何かされた訳でも無いでしょうに。

こんなに身体を熱くして。
あなたを此れほど乱し、興奮させたものは何ですか。

彼の言葉?
彼の仕草?
指の動き?
それとも、彼の存在そのものですか…。



それらの言葉を全て飲み込んだまま、私はブルーに触れていく。
マントを外し、上着のジッパーを下ろして…。
白い肌を露わにしていく。

予想通り、肌は既に上気していた。

「こんなになって……今日は―――」

痛いのがいいですか、それとも詰られるのがいいですか…?
答えられないのが分かっていて、あえて口にした。

ブルーは羞恥のあまり怒ったような視線を向けるが、何か言おうとした唇は
数度息を吸っただけで閉じてしまう。
真っ赤な口の端に、チラリと覗く白いもの。
悔しくて、唇を噛んででもいるのだろう。
しかし、その間も服を剥ぐため手を動かし続ける私を止めることは無い。
小さく震えながらも、身動ぎ一つすることなく、立ち尽くしていた。

すっかり全裸にしてしまった細い身体を私は、ぐいっと押した。
バランスを崩してよろけた所で、軽く足を払う。
床に尻餅を付いたブルーは、本当に火の噴きそうな真っ赤な瞳で私を睨んだ。

「今日は…そうですね、此処は私の部屋ですから、あなたには
 奴隷になって頂きましょうか」
「…………!」
「ほうら、ご挨拶をして」
「挨拶…?!」
「主をもてなすのですから、当然でしょう?」

尻を掲げて、振って見せて。
椅子に腰掛けながら、私はそう言った。

「な…っ!!」

ブルーが息を呑む。
これまでも何度か彼を奴隷扱いをしたことはあったが、私が一方的に
仕掛けるだけのものだった。
跪かせ、奉仕させた事もある。
目の前で自分で自分を弄らせて、白いものを噴き上げさせた事も。

だが、ここまで貶めたことは無い。
そこまでのことをしろと、言った事など無いのだから、ブルーが目を剥くのも
無理はないのだ。

「さあ、私を誘わないと欲しいものは手に入らないよ…ブルー…」

ブルー…欲しいものは何?
繰り返し名を呼んで、そう呟くと、床に座り込んだまま私を睨みつけていたブルーの
様子が変わった。
震える息を吐き始め、視線が和らかくなる。

「…ぁ……は…」

…ブルー…。
欲しいんだろう?
疼くんだろう?
私の言葉に操られるかのように、ゆるゆると腰を浮かせた。

「立ち上がって、こちらに背中を向けて…」

そう、そのまま腰を曲げて。
恥ずかしがっちゃいけないよ。
私の太いものが、そこに欲しいんだろう?

「…ぅ…」

両方の肘と膝を床に付いて。

「や…」

欲しくないのかい、ブルー?
早くしないと、行ってしまうよ。
いいのかな?

ブルーは私に向かって尻を突き出した。
けれど、足は閉じたままだ。

「足を開いて。私を欲しがる部分が見えない―――」

それじゃあ、あげられないよ、ブルー。
震える太股が開いていく。
雪のように白い双丘が割れ、その奥に隠していた赤い秘肉が露わになる。

「もっと良く見たいから、背中を反らせて」
「は…っ、ぅあ……あ…」

双丘の間から色の変わった部分がすっかり現れた。
ヒクつく窄まりも、下がった袋も。
だがその袋についている小さい竿は見えない。
ただ、光る銀の糸が垂れ下がっているのは分かった。

「なんだい、もう感じているの?」

涎を垂らして。
私の言葉に、ブルーが大きく震えた。

「見られてるだけで大きくして、涎をだらだら流すんだね。
 淫乱だ、本当に」
「ち…違…!」
「淫乱なブルーは、そこでダンスをするぐらい何でも無いだろう?」

さっさと、尻を振って。
冷たく言い放つと、ブルーは「はぁ…!」と息を吐き、天井を仰いだ。
きっと涙を流しているのだろう。
けれどそれは―――何の涙ですか…ブルー…。

「ブルー…」

私の目の前で、ゆっくりと白い尻が揺れ始めた。
























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