今日は男の悦ばせ方を知って貰うよ、ハーレイ。
メイドの嗜みだからね。
君ならすぐにでも出来てしまうだろうけれど―――。
その為にはまず、君が快楽を知らないといけないな。













―― Vous etes plus beau qu'une rose ――




Lecon 2










例の服に着替えて、一通りの家事を終えた。
今は、ベッドのブルーに紅茶を運んでいる。



あの服をクローゼットから取り出された時には嫌悪感で吐きそうだった。
なのに「嫌です」とは云えなかった。

私は手を伸ばしてサテン地の軽い服を受け取り、その場で着替える。
背中を向けたけれど、そんな行動に意味はない。
いかつい身体を縮こまらせて、この空気のような服に押し込んだのだ。
彼の目の前で、全てを晒して。

真っ赤になって、それでも一通りのものを身に着けた私は、命じられたことを
さっさと済ませてしまおう――そうすればこの辱めから逃れられる――と
踵を返した。
螺旋の階段を下り掛けたところで、呼び止められる。

「忘れ物だよ」

ちりん。
響いた鈴の音に、硬直した。
振り返ることすら出来ない。冷や汗まで掻きはじめていた。
すると、背後でくすりと笑う気配。

「そんなに嫌なのかい?じゃあ、止めておこうか………」

私はほうっと息をつく。
あれをしなくていい―――その安堵で頭の中はいっぱいだったから。
そうして、そのまま階段を下りてしまった。
私の背中を見ながら呟いたブルーの言葉を聞かずに。

「今は…ね」





運んできた紅茶をサイドテーブルに置く。
そのままベッドの脇に立って、上半身を大きな枕に預けるブルーを見た。

他にやることは?
そう視線で問えば、読み止しの本を閉じたブルーは両手を広げた。

「おいで」
「………どこにです?」
「僕の胸に決まっているだろう」

そう言って更に腕を広げる。
にこやかな笑顔に、釣り込まれた。

「潰れてしまいますよ」

笑いながら言う私の耳に、あの音が届く。
高くて軽い金属音。

「これを付けてあげるよ」

ちりん。
金に淡いピンクのコントラスト。

「さあ、おいで―――ハーレイ」

その音は何かの魔法だろうか。
私はギクシャクとした動きで、ベッドに上がった。
大きく開いたブルーの膝の間に入り込み、薄い胸に背中を預ける。

細い手が後ろから私を抱き締めた。
ぎゅ…。
力が込められる。

「…可愛いね…」

その言葉に―――私は震えた。



肩に顎を乗せて、ブルーは囁き出す。
息が耳をうなじをくすぐった。

ピンクが似合うね。
君の肌と。

するすると、腕が下に降りていく。
辿り着いた足の付け根から更に進み、僅かばかりのスカートの裾を抓んだ。
捲り上げると、ガーターと下着の間の素肌を撫でる。
思わず息を飲む私に、ふふふ…と笑いかけた。

くすぐったいのかな…?
それとも―――気持ちいい…?

指先が下着の端に触れる。
悪戯な爪がその下に潜り込もうとしていた。

「…!…は…ぅ…」

私は声を乗せて零れる吐息を止める事が出来ない。
指先は淫靡に動き、下からの侵入を開始していた。
下着の下で蠢く様子が正視出来ずに、私は顔を逸らした。

「駄目だよ、見て」

ブルーの叱責が飛ぶ。
小さい声なのに、私はびくっと震えると顔を元に戻した。

反対側からも指先は入り込んでおり、私をなぞっている。
いくら小さいとは言っても二つの男性の手なのだ。
入りきれる筈もない。
しかも、片方の手は例のリボンと鈴の戒めを隠している。
私の目の前で繰り広げられたのは、ありえないほど恥ずかしいものだった。

少し手を振り払えば、逃れられるのに……。
私はそれが出来なかった。

「少し大きくしておかないと、苦しいよね」

ブルーは私を撫で擦る。
それはあっという間に硬くなり、あろうことか先端から涎を零し出した。

「ふふ…感じやすいね」
「―――!」

すっかり硬くなった私に、細いブルーの指がサテンのリボンを巻いていく。
根元から徐々に上へ。
ピンクのそれはすっぽりと私を包んでしまい、括れた部分で幾重にも巻かれた。
そして、仕上げに金の小さな鈴が付けられる。

「…ぁ……は……」
「出来た」

じゃあ、愉しもうか。
ブルーの指が手が、私の服の上を這い回り始めた。

一方は脇を撫で上げ、他方は内股を擦る。
ゆっくりとした動きだが、それはゾクゾクしたものを私に与えた。

うなじにはブルーの唇が張り付く。
そこから伸びる舌先が、耳朶を嬲った。

「…ぅ……っ…!」

零れてしまう声を必死に堪える。
だが、噛み締める歯の奥から鼻に掛かった声が零れてしまうのを止められない。

「我慢しなくていいよ。いい声で、啼いて……」

ブルーの指は、服の上からも分かるほど尖る胸の突起を嬲っていた。
同時に、リボンの戒めを受けた私自身も。

「…んんぅ……ぁ…っ……は…!」
「もう染みてきた」
「ぃ…ぅ……ぁ…あっ!」
「胸と…どっちが気持ちいい?」

きゅうっと抓まれ、捩じられた。
私は思わず大きな声を出す。

「ああああっ!」
「そう…いい子だね。もっと、聴きたいな」

ブルーの指は止まらない。
私は何度も声を上げた。





いつの間にか服は脱がされ、私は全裸でベッドに横たわっていた。
背中を預けていたはずのブルーは居ない。
頭を持ち上げれば、下方に銀の髪が見えた。

「ハーレイ、もっと開いて」

足の付け根、蹲るブルーが押し開く。
私は身体を起こし、両肘を付いた。

「ブルー…!止めて下さい!」
「いやだ」

止めないよ。
ブルーは見せ付けるように舌を出し、私をぺろりと舐めると咥えた。
背筋を駆け上がってくる電流に、仰け反る。

銀糸が上下し、私はあっという間に絶頂間を得た。
だが―――。

「ぅうあ…っ!」

甘い快感と、苦痛。
達するのに射精出来ない痛みが走る。
なのに、ブルーは止めてくれない。

「ぁああああっ!は…ぅあああ…!」

頭を振り悶える。
そんな私に、ブルーはあるものを見せた。

「見忘れたとは言わないよね?」

5センチほどの小さな機械。
身体の奥に入れられ、散々嬲られた記憶が蘇る。
同時に鳥肌が立ち、その部分が疼いた。

ブルーの指が、するっと入ってくる。
ゼリーか何かを塗っていたのだろう。
私はあっさりと2本を受け入れてしまう。

「―――っつ…ぅ…!」

何かを塗りこめるように動き、指はするりと抜かれた。
ブルーはにっこりと微笑み、親指と人差し指で挟んだローターに口付けて見せる。

「入れるよ…」

返事をする間もなく、それは胎内に押し込まれた。
指先で更に押され、ローターは奥に侵入した。
すぐに振動し出す。

「ああっ!いやだ…!」

鈴の音が聞こえる。
堪えきれず私は眼を瞑った。
すると「もう一度言わないといけないのかな?」とブルーの声。

私はゆるゆると瞼を押し上げる。
目が合ったブルーは微笑んだ。

力むから、下がってきた。
ブルーの中指がローターを押し戻す。

内壁を抉るような動きは、苦痛よりも快感を生んだ。
思わず力が入る。
するとローターは入り口近くまで下りてきてしまって―――。
それをブルーは押し上げる。

何度も繰り返された。
私の身体がゆっくりと快感を覚えこまされていく。
排出することしか知らなかった器官が、作り変えられていくのを
まざまざと感じさせれた。

「はぁ…ああ……、う…ぁあああ…」
「大分蕩けてきた…」

ブルーの指は3本に増えていた。
それがバラバラに動き、奥で蠢くローターと共に私を攻め立てる。

あ―――また………!!
声を上げるが、戒めのため熱を放出することが出来ない。
苦しくて、堪らない。
耐え切れなくて、私は懇願した。

「お願いです…!外してください…!」
「イきたいの?」
「はい…!」

じゃあ、お強請りしてみせてごらん。

ブルーの言葉に絶望する。
ぽろりと涙が零れた。

「…出来ません…」
「ちょっと言えばいいんだよ?」
「私には…っ、出来…な…ぁ…!」

ローターが内壁を抉る。
もっとも敏感な部分を擦られて、再び腰が震えた。

「ひ……っ…ぅ…許して…くだ…っぁ…さ…!!」

達してしまい、腕から力が抜けた。
吐き出せない精が暴れているのか、両足の間が痛む。

痙攣するように震える足を、そっと撫でる手。
ブルーの手のひらが、それを宥めるように動いていた。

「ごめん、ハーレイ。君はそんなはしたない子じゃなかった…」
「…ブルー…」
「いいよ―――」

イって…。
するするとリボンを外す。
肌を滑るその刺激すら辛い。
ちりん、ちりん、と鈴が鳴った。

空気に晒され、ひんやりした感覚を憶えた途端―――。

「ああああっ!?駄目です、ブルーっ!」

温かいものに包まれる。
どうしようもない所まで追い詰められていた私を、再びブルーが口に含んだのだ。

「いけません、ブルーっ!我慢が―――」
「旦那さまだ」

咥えながら言葉を発せられた振動で、私は欲望を解き放ってしまった。
信じられないほどの快感。
ぼろぼろと涙が溢れる。

そうしてそれは、長く続いた。





放ってしまった…。
ブルーの口の中に…。

その事実と快楽の余韻に呆然とする私に、ブルーが圧し掛かってきた。
唇を重ねられる。

「―――?!」

とろり。
何かを注ぎ込まれた。
憶えのある匂いに、愕然とする。

顔を背け吐き出そうとした行為は、ブルーの白い手に制止された。
顎を押さえられ、更に与えられる。
込み上げる吐き気を堪えた。

「飲み込むんだ」

顔を顰める私に、ブルーが言う。
小さく顔を振る私に、更に命じた。

「全部飲むんだ、ハーレイ」

自分の放ったものを飲めと…?
目を見開く私に、ブルーは言う。

「さあ……」

震えながら、私は咽喉を鳴らした。
2度、3度…。
目を逸らさずに、嚥下してみせる。
またしても頬を涙が伝う。

全部飲み込むと、ブルーの唇が降ってきた。
優しい、優しい口付け。

緊張の糸が切れたのか、私の脳内が白く霞み出す。
意識を失いながら、その声を聞いた。



いい子だ。
いい子だね、ハーレイ。











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