2 キラ


まったく、あの人ときたら

またマリューさんを悲しませるなんて
更に泣かせようだなんて

許せない・・・・・



「えっと、キラくん?」

マリューさんに頼みごとをしていたのに、いつの間にかあの人の椅子を睨みつけてしまっていた。
尖った気分を消して、笑顔で振り返る。

「はい、すみません。その書類ですので、よろしくお願いします。」

会議で本社に向かうマリューさんにケースを渡す。
上司である彼女に頼まなければならないものでもないのだけれど、仕方が無い。


早くこの部屋から出てもらう為には、この用事が一番無理が無いのだから。


本当にすみませんと言葉を足せば、マリューさんはふわっと笑った。

「そんなに気にしないで。ついでだもの」

ホントに綺麗だと思う。
マリューさんの笑顔は、柔らかくてふわふわしていて。
でもそれだけじゃない、優しいけれど静かに何か芯に強いものを感じさせる、とても素敵なものだ。

改めて、大好きだと思う。
この微笑も。
マリューさん自身も。


出口まで見送ると、視線の先にはあの人のMSがあった。
金色のモビルスーツ-----

自分の目が細くなったのは、アカツキが必要以上に太陽光を反射している所為だけではないことは自覚している。

その足元から影が二つ現れた。
影のひとつ、マードックさんが大きく手を振りながら怒鳴った。

「お〜い、キラぁ!艦長に降りてくるように言ってくれねーか?」


ギリギリセーフ
胸の中で息を吐く

「マリューさんなら、さっきお出かけになりましたよ」

大声で答えながら2人の元へ急ぐ。
早足で階段を降りながら、宇宙だったら簡単だったのにとちらりと思った。

アカツキの足元の二人は不満そうな顔をしていた。

「ちょっと早くねえか?」

その不満を口に出したのはマードックさんで、ムウさんは口をへの字に曲げただけだった。
旦那、どうします?との問いに返事もせず、出口を見つめている。

「旦那ぁ」
「ま、しゃーないな」
「しゃーないじゃねえっすよ〜」

ムウさんの気の無い返事に、マードックさんはペンで頭を掻いている。
その困った様子に、急ぎの仕事かと水を向けてみた。

「んじゃ、キラにも聞いて貰うか。意見が欲しいんだよ」



15分ほどでマードックさんとの打ち合わせも目途がついた。
その間ムウさんは不機嫌なまま、一言も口を利かなかった。

「にしても、今日艦長にOK取れれば、発注出来ちまったのによぉ。今日に限って何でこんな早く出かけちまったかなぁ」
「・・・そうですね」

チラリと斜め上の仏頂面を見上げた。


「でも、エリカさんとお話もあるでしょうし」


ちょっとした爆弾発言

怒るかもしれないと思った
いや、怒らせたかったのかもしれない

実際、マードックさんは逃げるようにアカツキに戻ってしまった。
その顔は、引き攣っていたように見えたし。

しかし、ムウさんは僕を一瞥したのみで、何も言わずに歩き出した。
僕はその背中を見つめる。

あまり進まないうちにふと、立ち止まった。
振り返らずに言う。

「今度、カガリ嬢ちゃんのパーティがあるだろ?アレ、出席してくれるようにマリューに伝えてくれよ」
「・・・自分で言えば良いじゃないですか」


ちょっと意地悪い言い方だなとは思った。


「そうしたいのは山々だけど」
そこで言葉を切って振り返る。そして頭をガシガシ掻いた。

「あー、お前が怒ってるのは解ったからさ」

もう、お仕置きは懲りたよ。
笑いながら言う。




気づいてたか


マリューさんには勿論、ミリアリアやマードックさん、それにアスランにさえバレてないと思うのだけれど
人の気持ちに聡い人だから、驚きはしないのだけれど

じゃあ、何でマリューさんの気持ちには・・・
同時にそういう思いも湧いてくる

ムウさんの言葉を肯定する意味で、笑ってみせる。

「頼む、な」
「・・・・・僕が、伝えると?」

僕の問いに答えたムウさんの台詞は、ちょっと図々しいものだった。

「マリューがこれ以上元気ないと困るだろ、キラも」

原因のあなたがそれを言いますか?!
僕の口からその言葉が出る前に、ムウさんは言った。




「困るよ、オレも。物凄く」




腕を後頭部で組み事務室へと上がっていったムウさんを見送りながら、ため息をついた。

「かなわないなあ」

僕はそう呟いていた。







(2006/6/5)
続く


どこが「ぶる☆ねお」?!な中途半端なトコで終わってます!
すみませ〜んっ睡魔に勝てず・・・
必ず近日アップ&ブルジョアなネオで!



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