何で二人いるの?!

叫んだブルーは、次の瞬間ハーレイの腕の中に閉じ込められていた。
緑の制服を着たいつもの彼なのに、その瞳には見慣れない色を宿している。

「…ブルー…」

名を呼ぶ声も同じなのに―――違う。
込められる温度が。

「大丈夫だろうか…?」

心配する声は、記憶にあるもので。
でも、今ここにはある筈のないもの。
ブルーは正面のハーレイを、おずおずと呼んだ。

「ハーレイ…だよね…?」
「…はい」

困ったように笑う顔は、随分昔の記憶の中に沈んでいるもの。
数え切れないほどその笑顔に癒され、勇気付けられてきた。

負けるな。
諦めるな。
死ぬな。

あの地獄の中、その言葉を繰り返し、繰り返し、言い続けてきた彼だった。
どうして…と問うブルーに、少し首を傾げてみせる。

「私にも分からないんですが……でも、ほっとしました」

そう言って笑った顔がとても眩しくて。
息を呑むブルーに、言葉を続ける。

こんなにお元気で幸せそうなあなたを見ることが出来て。
今は光など見えないけれど、乗り越えた先にこんなに穏やかなあなたがいるのなら。

アルタミラの服を着たハーレイは、腕を伸ばして細い手首を取る。
跪き、白い手袋に唇を落とした。
手の甲はじんわりと温かくなり、くすぐったい気持ちになったブルーの耳に、
後ろから聞きなれた低い声が届く。

「さあ、始めようか…」

振り返ったブルーの唇は、温かいもので覆われた。

二人っきりではないのだと暴れるブルーを腕の中に閉じ込めたまま、
ハーレイはキスを激しくする。
制服を掴む手から力が抜けるまで、キャプテンは唇を離さなかった。

クチ…。
微かな音と共に解放されると、ブルーは大きく息を吸い込みながらも
ハーレイを押し返した。

「何考えてるんだい?!」
「二人っきりでしょう…?」
「―――?!」
「あれも………私です」

視線を向けた先で、若いハーレイが肩を竦めて見せる。

「や…っ、でも…?!」
「3人で―――一度してみたかったんですよ」
「ハーレイ?!」
「これなら―――」

私も許せます。
あなたをシェアする、という行為にね。



服はあっという間に剥ぎ取られた。
キャプテンが立ったままブルーの腕を押さえ、前のハーレイがマントを、
ブーツを脱がせ、ジッパーを下ろしていく。

「止めろ!」
「―――先に留め金を外すんだ。そう、左に捩じるように」
「ハーレイっ!」

ブルーの声を無視して、二人は手際よく白い肌を晒していった。
あまり時間も経ず、ブルーは全裸にされてしまう。

そのまま、ベッドまで抱えて運ばれた。
腰を下ろすと、ハーレイは背中からブルーを抱き締める。
うなじを舐め上げ、前に回した手でわき腹を撫でた。

「…あ…っ」

先程のキスで既に昂ぶっているブルーは震えと声を抑えることが出来ない。
反り返り突き出された胸に、もう1人のハーレイが吸い付いた。

「や…あぅ……ん…ぅ…」

舌を出して。
舐めるところを見せて、ブルーに…。

ハーレイが"ハーレイ"に指示を出す。
長い舌が赤い口から出て、ブルーの尖った朱にゆっくりと寄せられた。
べろり。
目の前で舐め上げられると胸から電流が走った。
それはブルーの胎内を焼き、跨った両足の付け根、奥深い場所を疼かせる。

「…あ…はぁ…!」

背後のハーレイはするすると手を下ろし、猛り切って涙を流す
ブルーを掴んだ。
すっぽりと手で覆ってしまうと、緩やかに上下させる。
同時に指先に掬った先走りを後ろに塗り込める。
人差し指でまだ硬い壁を揉んだ。

「ひぁ…っ!」

揉み解す指先は止めず、中指を中心に当てがう。
びくっと震えるブルーの耳を噛んだ。
入れますよ。
囁いてゆっくりと押し込んでいく。

堪らないといった風情で顔を振りながら膝の上で腰を揺らす姿に、
正面のハーレイが唾を飲み込んだ。
息を荒くし、乱暴に銀糸を掴む。
噛み付くように口付けた。

「…んう……は…ふ……んん…っ」

両の手で頬を挟み、激しく口内を舐る。
飲み込めない唾液が口の端から零れ、銀の糸を引いた。

程なく―――。
ブルーはハーレイの手の中に吐精した。




身体を預け、くったりとしたブルーをハーレイは抱え直す。
年若い自分に向け、細い両足を開いて見せた。
荒い息のままのブルーはされるがまま、色素を濃く沈着させた
足の付け根を晒していた。

「入れたいんだろう…?」

下穿きの前を膨らませたハーレイの咽喉が鳴る。
さあ、と言わんがばかりに足を開かせたブルーを差し出した。
余韻で虚ろに天井を眺めていた赤い瞳が、ちら…と下方に視線を投げる。

瞬間―――射抜かれた、と感じた。

一瞬で沸点に達した熱情に導かれるまま、若いハーレイは下穿きを毟り取る。
天を向いた自身を当てがうと、一気に貫いた。

「ひ…ぃ…!ぁあああ…っ」

上を向いて開かれた、細い足が揺れる。
抜けるように白い太股に手を付いて、一心に腰を穿った。

「…は……は……」
「ぅう…あっ、ひっ…ふ…ぅ…!」

アルタミラのハーレイの汗が滴り落ちて、同じように汗ばむブルーを濡らす。
途切れ途切れに嬌声を上げ、カクカクと震える姿を愛おしいげに眺める
もう1人のハーレイ。
頬に手をあて、呟いた。

「こんなにも色っぽい顔をなさっていたんですね…」

その大きな褐色の手に、つつ…と唾液が伝う。
ハーレイはその手を目の高さまで上げると眺めた。
そうして、微笑んだ形の口に当てる。

「あ…あ……は…ぅう…いあ…ぁあ…っ!」
「…ぁ……、もう…もう―――っ!」

ブルーを貫いていたハーレイが声を上げた。
ぐいと腰を押し付けて、中の奥深い場所に放った。

胎内に生まれた温かい感触にブルーも身体を震わせるが、細い先端から出たのは
とろりとした透明な液体だった。

「ああ…足りないんですね…」

もっと、もっと欲しいでしょう?
制服のハーレイが、足の間の銀糸をそっと撫でた。





どうして…拒めないのだろう。

白い白いシーツの上、二つの褐色と絡み合いながらブルーは思う。
大きく足を開かれ、決して人には見せない部分を晒しているのに。
恥ずかしくて、恥ずかしくて…消え入りたい程なのに。

でも、拒めない―――二つの身体が与える快楽に。





あああぁ…っ!

下から突き上げられ、仰け反った。
その背中をハーレイに抱き止められる。

両手で腰を掴まれ、胡坐を掻いた上に押し付けられた。
更に深く銜え込まされる。
もう幾度目なのか分からない絶頂感が、ブルーの身体を駆け抜けた。

震え、声を上げ、涙を流す白い身体をもう一つの褐色が包む。
包み込む様に圧し掛かり、肉厚の唇でブルーに触れていた。
唇からうなじ、鎖骨に沿って肌を滑り下り、尖って刺激を乞う胸の朱を
その内に含む。

「ひぅ…っ…」

悲鳴のような嬌声は、掠れ気味だ。
その声に、唇を離した正面のハーレイがにやりと笑う。

いい声だ。
とても、いい…。

そう言うと、愛撫を再開する。
両方の赤い突起を吸って舐めて、満遍なく刺激すると、下降した。

綺麗な形の腹筋と臍に舌を這わせ、ささやかな銀の草むらに鼻を突っ込む。
強い精の匂いと微かな体臭。
先程吐精したばかりなのに……。
ハーレイは自身に血液が集まってくるのを感じた。

同じように熱を集めたブルーのものは勃ち上がっているにも関わらず、
身体に合わせた可愛らしいもので。
先端に口付けし、ぺろりと舐めればカクカクと震えた。

ブルー…

細い身体を揺するハーレイが、囁く。
その声も熱を孕んで、掠れていた。

いいですか…?

もう言葉を失っているブルーは、焦点の合わない目を宙に向けたまま頷く。
その虚ろな紅が大きく広がった。
目と口を大きく開いて、高い声を放つ。

「ひ…ぃ…!…あ…はああああぁ……っ!!」

若いハーレイがブルーを口に咥え激しい愛撫を加えていた。
ささやかな茎の根元を指で締め付けながら、頭を上下させる。
舌はブルーの裏側にぴったりと当てられ、動くたびに自分の指のある付け根から
敏感な括れまでを刺激した。

「先のスリットを少し開いて…。ほんの少しだけ舌を入れて…」

言いながら、ブルーを深く抱え込む背後のハーレイも胸を弄り出した。
抓み上げて捩じって、擦る。

「うわ……は…ぁ……、ひぅあ……ああああ…っ」

銀糸が激しく揺れた。
全身のあらゆる場所から快感が生まれ、ブルーを狂わせていく。

「…や…ぁ……は…あ……ぅ…!」

足の間に顔を埋めるハーレイが更に下がった。
潜り込む様にブルーの臀部へ―――繋がった部分へと。

そして、舌を伸ばす。
結合部を舐めた。

「や…あああああああああああああっ!」

言葉にならない声とベッドの軋む音、そして3人の重なる部分から発せられる水音。
それだけが青の間に響いていていく。





ブルーを咥え、口内で嬲っていたハーレイが顔を上げた。
指の戒めは外さない。
涙と涎に塗れた白い身体は、突き上げられる動きにただただ翻弄されていた。
されるがままに人形のように揺れる。

ブルー…なんて……―――!

吸い寄せられてしまう…。
ハーレイは顔を寄せた。
半開きの唇を覆い、舌を差し入れる。

渇き気味のブルーの口内に唾液を注ぎ込むかのように、深く深く。
躊躇うことなく、ブルーはそれを嚥下した。





ブルー
ブルー
…ブルー…

二人の声が遠くから近くから聞こえた。
夢現のまま手を伸ばす。
うなじと足の間と。
二人の金糸に触れた。

柔らかい、同じ手触り。
ああ―――

「…ハーレイ……」












はっと目を開いた。
眼前には強烈な電子の光。
チカチカと高速に点滅を繰り返す、目の奥が痛むほどの強い光。
背中には濡れた感触。
自らの汗だ。

慣らされた"懐かしい"感覚―――帰って来たか、地獄に。

…帰って来た?
一体どこから?
ハーレイに明確な答えはなかった。
実験中、あまりの激痛に気を失ったのだろう。
そう思った。

間断なく襲い来る痛みに歯を食い縛る。
だが、それを割って声が出てしまう。
それほどの苦痛の中で、ハーレイの唇が動いた。

「…ブルー…」

「ん?」
「おい、こいつ笑ってるぜ?」

研究員が指差した。
台の上で両手両足を拘束されて、巨大なヘッドギアを嵌められたまま苦痛に
もがき苦しんでいるはずの実験動物。
なのに、その口元が僅かだが弧を描いている。

「壊れかけてんじゃないのか?」
「構わないさ。こいつの替わりは幾らでもいる」
「そうだな」
「出力を上げるか?」
「ああ」

その声を聞いても、ハーレイの笑みは消えなかった。



幾らでも言っていればいい。
我々には未来がある。
そう、間違いなくあるのだから。



身体を跳ね上げた。
背骨に針金でも通されてでもいるようだ。
形容し難い激痛。
だが、ハーレイのその思いは、消えることはなかった。
















---------------------------------------------------- 20080320 君だけど君じゃない でも―――やっぱり君だった