キッチンの中は魚貝とハーブとサフランが溶け合った、美味しそうな香りで満ちていた。 食べることにあまり関心の無いソロモンでも、胃袋が刺激される程だ。 それを素直に伝えれると、アンシェルはスープを皿に少量掬い、ソロモンに差し出した。 口に含むと予想通りの濃厚な味が広がる……旨い。 delusion――――if 02 ソロモンは小皿をくいっと傾け飲み干した。 僅かに口の端に零れたスープを親指で拭う。 口に合ったのだろう、微笑んで見せた。 その屈託の無い笑顔に―――――煽られた。 その指を掴むと、自分の口に近づけた。 舌を出し、ぺろりと舐める。 「・・・あ」 良い味だ。 そう言ってソロモンの指を口に含んだ。 くちゅっと音を立て、もう一度舐め上げる。 そのまま手のひらに口付けた。 ソロモンはびくりと身体を震わす。 口付けたまま掬い上げるように見やり、あからさまに、今すぐ欲しいと訴える。 その視線を理解したソロモンは息を弾ませ、頬を紅潮させ始めた。 震え始めた身体を抱き寄せる。 細い顎を掴み、口を開かせ―――――塞いだ。 ん、ふ…んん……。 くぐもった声がキッチンに響いた。 後ろから頭を固定し、貪るようなキスを続ける。 次第にソロモンの膝に力が入らなくなり、身体を預けてきた。 いつものように。 抱いたままゆっくりとシンクまで進み、くるりと後ろを向かせる。 シンクに両手を付かせ、背中から自由になった手を回し、 ジーンズのボタンを外した。 「……あ…あ……あ………」 一つ、二つ。 外すたびにソロモンは震え、声を零す。 伸びて項を覆う柔らかい金糸に顔を埋め、鼻先で掻き分けた。 到達した白い首筋に舌を這わせる。 んあ! ソロモンはびくっと身体を震わせ、大きく喘いだ。 そのまま耳朶を嬲ると、身体の震えが止まらなくなる。 「ああ…ん……ああ…ああ………んん……あ」 舌を止めずにジーンズの最後のボタンを外し、足元へ落とした。 滑らかな双丘を撫で、谷に沿って指を這わせる。 ソロモンの声が大きくなった。 顔をあげ、正面の鏡を見る。 そこには紅潮した顔に目と口を半分開いて、 蕩けそうに陶然とした表情のソロモンが映っていた。 鏡越しに視線を絡めて、強請ってくる。 もっと、もっと、と。 身体の熱が一気に上昇した。 右手をボタンダウンのシャツに滑り込ませ、胸の突起を弄る。 そして、まだ固い蕾に、左手の中指を潜り込ませた。 「ん、ひ…あああ――――!」 ソロモンは顔を仰け反らせ、心地好い声で啼いた。 艶と苦痛を合わせた、きれいな啼き声だ。 構わず指を増やし、出し入れしながら内壁を抉る。 鏡の中の顔が眉根を寄せた苦しげなものに変わった。 シャツの下で蠢いていた手をその半開きの口に入れ、しゃぶらせる。 ソロモンは苦しげな表情ながらも、指に舌を絡ませてくる。 程よく唾液に塗れた手で、猛るソロモン自身を嬲った。 先端から握り、ドアノブでも回すように撫でる。 唾液と先走りが混ざり合い、淫らしい水音を立てた。 ソロモンの声に乗る艶が、色を増す。 同時に、指をきつく締め付けていた秘所が僅かに緩んだ。 嬲っていた指をずるりと引き抜き、己の強張りを当てる。 「―――――!」 ソロモンが息を飲んだ。 再び鏡を挟んで、目が合う。 ――――きて、欲しい……… やや前屈した身体をきつく抱き締めた。 柔らかい、でも、女性のものとは明らかに違う、筋肉の固さを内包した身体。 それに自分を飲み込ませていく。 ゆっくりと、ゆっくりと。 「んく…あ…あ………あぁ……」 己の高まりを受け入れていく時の彼の表情が堪らない。 頬を紅潮させ、苦しげな息と少しの喘ぎ声を零す口は半分だけ開き、 白い歯と対照的な深紅の舌を僅かに覗かせる。 始めは固く瞼を閉じ、眉間に皺を寄せるほど苦しそうな表情。 それは括れた部分が通過するまで続く。 最も太い部分を飲み込んでしまうと、浅く息を吐き、 薄く目を開いて、表情を緩ませる。 すると、隠れていた淫らな顔が姿を現し始める。 「……ん…ぁぁ………んはぁ…」 声にも艶が乗り、薄く見える青い瞳は潤んでいた。 唇は赤みを増し、それに赤いベルベットのような舌が這う。 唾を飲み込み、上下する白い喉が光った。 そこで少し揺すってやる。 「あ!ま、まだ……」 苦痛を感じるのだろう。顔を歪めて振り向いた。 動かないで…下さい、と掠れた声で訴える。 泣き顔もいいが、この天使のような顔が淫らに変わっていくさまには 本当にそそられる。 動かないでいてやると、苦しげな短い息遣いは治まり、ソロモンは再び陶酔していった。 緩慢な侵入を再開する。 「…ああ…あ……ああああ…んあ…ああ…」 進むにつれ、白磁のような頬に刺す赤みが増す。 シンクを掴む指の関節が白くなっていた。 そうして。 先端がソロモンの狭い秘所の奥に到達する。 まだ入りきらない昂ぶりをぐいと押し込んだ。 自身と内壁が擦れ、電流のような快感が身体を走る。 それはソロモンも同じようで、一際高い嬌声を放った。 もっと味わって堪能していたいが、視界の寸胴鍋と 珍しく空腹を訴える己の身体が後にしろと訴えていた。 そう。 時間は、ある。飽きるほどに――――― ゆるゆると左手の動きも再開する。 粘つく先走りでびちゃびちゃなソロモン自身を強めに扱いた。 「ああああああっ!」 締め付けを増す秘所も、加減せずに穿つ。 キッチンに響くソロモンの声は長く続かず、二人は同時に果てた。 翌朝。 ベッドの中で、アンシェルは意識を飛ばしぐったりとしたソロモンを抱き締めていた。 |